LA - テニス
□TRAGIC LOVE
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『ねぇ。例えばさ、私に何か遭って死んだらどうする?』
遺言。
例えば…という言葉が本当になるなんて…きっと誰も予想していなかったよね。
何の前触れもなく、私は死んでしまった。
「何で…何でやッ!!」
私の棺の前で取り乱す侑士を、跡部くんたちが押さえている姿が見えた。
「夏休みに旅行に行こう言うたやんッ。近場でえぇからって…ッ」
侑士は泣いていた。
初めて見たかも…。
うん。確かに約束したね。でも…もうそれは無理だよ。
私は死んでしまったから…。
絶対、死ぬはずがないって思っていても、人間ってこうもあっさり死んでしまって…大きくなった体も小さくなってお墓に入る。
儚い生き物だね。
『私、お墓に入るのは嫌だな…だって寒そうなんだもん。だったら、侑士とよく行った海に流して欲しいな』
遺言になったね。
私とあなたの…。
交通事故ってカタチで死んでしまったけど、もしあの日…あの場所にいなくても、私はきっと死んでいたって思うよ。
それが運命じゃない?
違うかな?
体は死んでも、魂はいつも侑士の傍にいるから…。
だから泣かないで?
これを乗り越えたら…以前みたいに笑っていて…?
「本当に骨を海に撒く気かよ…」
「…あぁ。それがアイツの遺言やねん」
あん時、お前がそう言うたから無理言うて…お前の両親から少しだけ骨をもろうて来たわ。
お前はどう思うとる?
「…俺が言うのも何だけどよ…」
「ん?」
「早くお前が元気にならねぇと、アイツも気が気でねぇと思うぜ?」
跡部が苦笑してそう言った。
「…せやな。でも…俺はアイツを忘れることは出来へんねや」
「ばーか。それは当たり前だろ。お前は人間だろ?」
人間…やから…忘れずにいてやりたい。
「ま、リセット機能が付いてるほど、お前は性能は良さそうじゃねぇけどな」
跡部の冗談に…少しだけ笑った。
遺言…守れたかいな?
「愛しとるで…」
潮風に乗せて、粉になった骨が舞っていった。
END