LA - テニス

TRAGIC LOVE
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Way Out






誰か…ここから出して…。






「おはよう。ゆい」

「…おはよう」

部屋の唯一の扉が開いて、いつものように貞治が私の傍へと近付いてくる。

「よく眠れた?」

「…」

「最近は暴れなくなったから嬉しいよ」

「…」

私は何も答えずに、ただ部屋の片隅だけを見つめていた。




隔離されて何日が経っただろうか…。

何もない部屋は気が狂いそうで…。



隔離されている意味すらわからない。






隔離しているのは、私が愛していた人。



私は…誰なの?



「俺は学校に行くけど、ゆいはおとなしくしておいて」

「…」

外側から鍵が掛けられて、一人の長い時間が始まった。





ねぇ、何のために?
ねぇ、誰のために?
いつまでココにいたらいいの…?



窓もなくて、出口もなくて、気が狂いそうな時間と空間は、どこまで続いてるの?







出口はどこにあるか…教えて…?



頭を抱えて考えても、思考回路はすでに皆無。

どれだけ絶望に崩れ落ちても、意味なんて何もないの。



答えなんて見つからない。

答えなんてどこにもない。





ここから出して…。








――…。




「おとなしくしてたみたいだね」

「貞治…」

制服姿で微笑み、私の傍に近付く彼。



私は一体、何?





「…私の目をあげる…手も足も体ごと…だから…ここから出して…」



お願い…。



「ゆいは最初から俺だけのモノだよ。君の全てが俺のモノだったけど…」





「…もっと俺のモノに…なりたいんだね?」





押し倒された体。
塞がれた唇。
手を掛けられた首筋。


「永遠に俺のモノになりたいんだね?」

「…うん」


それで解放されるならば…。




再び、重なった唇は離れることはなく、彼の手の力は徐々に強まっていく。



うっすらと見える彼の顔。


私は微笑んで見つめた。



薄れゆく意識。

これを手放せば、出口に辿りつけるかな?



それだけを考えて、目を閉じて…呼吸を止めた。







――至福…。







END
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