LA - テニス
□TRAGIC LOVE
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teddy bear
「見て下さい。すごく綺麗にはっきりと見えていますよ。星が…」
彼は部屋の窓のカーテンを開けて、空に浮かぶ星を指さしてそう言った。
「あ、ホントだ」
「東京の都心でこんなに星が見える日は珍しいですよ」
夜の来ない街は、空の星の光より地上の光の方が強く、空の光はかき消されてしまう…。
私も彼も星を見るのが好きだった。
光という光が消えない場所で、かすかに見える星は健気でありながら、何よりも美しかったから…。
「もっと夜も明るくない…街灯もないような所へ行けば…きっと、もっと綺麗に見えるんでしょうね」
「うん。そんな所で星を見て過ごしたいね」
「そうですね。いつか見に行きましょうね」
彼は微笑んで私を抱き締めてくれた。
その腕は暖かく、とても安心出来るぬくもりだった。
私はその『いつか』を期待して眠りについた。
それが最後の夜。
「…また思い出したみたい…」
葬ったはずの『いつか』の夜。
私は冷たく感じるベットの中で、抱き締めてくれるモノもなく、自分自身を抱き締めた。
彼はそれ以来、私の目の前に現れない。
あの日、目覚めた私の枕元には、大きなクマのぬいぐるみがいた。
隣にいるはずのあなたの姿と引き換えに…。
END