LA - テニス
□TRAGIC LOVE
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energy flow
「ねぇ、リョーマ。聴こえる?」
音楽室のピアノに向かって、私はずっと弾き続けている。
リョーマが好きだって言ったから…。
『energy flow』
これは私からの弔いの鎮魂曲…。
でもね。本当はあなたが悪いんだよ?
私の言う通りにしていれば…こんなことにならなかったのにね。
ピアノの黒塗の譜面板には、不気味に微笑む私が映っていた。象牙で少し黄ばんでいるはずの白鍵は、私が触れたところだけが深紅に染まってベタベタになっている。
「私ね、ずっとリョーマと一緒に居たかったんだけどね」
それでも弾き続ける手…。
「まさか、リョーマがそれを望んでないとは思わなかったよ」
振り返った先には、血の気もなく横たわったあなた。もう血の一滴も残らないくらいに出血していた。
「だから殺しちゃった」
持参した果物ナイフで首の動脈を切った時、桜の花びらが舞うよりも鮮やかで美しかった。かすかな悲鳴を上げたけど、すぐに聞こえなくなった。
「これで永遠に私だけのモノね」
私は弾くことを止めずに、ただ同じ曲を弾き続ける。
あなたに捧げる鎮魂曲を…。
END