LA - テニス

TRAGIC LOVE
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戦場のメリークリスマス





あれ?貞治…泣いてる?
すごく後悔してみたいに泣いて…どうしたの?
…誰を見てるの?

…あれは…。




「私、この戦場のメリークリスマスが好きッ」

「うん。そう言うと思ったから、ゆいの着信音にしてるよ」

彼はそう言うと、携帯を取り出して私に聴かせてくれた。
私が掛けないと鳴ることのない戦場のメリークリスマスを…。

「この曲って綺麗よね」

「でもさ…主旋律は綺麗だけど、伴奏には戦場のイメージが見え隠れしている気がするな…」

彼は携帯をパカッと閉めた。
鳴っていた着信音は、オルゴールの蓋が閉められたようにピタリと鳴り止んだ。





「貞治ッ。もうココでいいよ。あと少しだし」

私は毎日、家まで送ってもらうのが申し訳なくて、家の手前の曲がり角のところで立ち止まって彼の方を振り向く。

「ここまで来たら家までと大して変わらないよ」

「ん〜。でも、今日はいいよ。疲れてるでしょ?」

「でもな…」

「いいからッ」

私は自分のマフラーを外して彼の首に巻いてあげる。

「明日、疲れてたり、風邪ひいたりしてたら怒るからねッ」

「…ゆいには負けるよ」

彼は苦笑しながらも私を抱き締めて、そっとキスをくれる。

「気を付けてくれよ?何かあったら携帯を鳴らして?」

「うんッ。また明日ね♪」

私は笑顔で手を振る。
彼の背中が見えなくなるまでただ、見つめていた。


いつもだったら、自分の部屋の窓から見つめているだけだけど、今日は違っていた。


何かが新鮮でありながら…何かが違っていた。





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