LA - その他

□女神異聞録ペルソナ
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建物の中が安全だ、と誰かが言った。
そうなれば学校だって安全だとわかっていた。
それなのに…


「…誰か来てよ」


コールしても返って来ない。
メールを打っても返事はない。
意味を成さない携帯電話に用なんかなかった。





選択〜綾瀬優香〜





町の廃工場。
稲葉の描いた絵が華やかに、でも寂しく見える。
そこに出入りする者はなくて…
かと言って、外へ出る勇気はもう綾瀬には残っていなかった。

「……」

学校を飛び出したのは自分だけじゃない。
少なくとも自分より先に飛び出したのは…

桐島、桐島英理子。





『何で…学校は安全だって藤堂たちが言ってたじゃん』

戦う術もない。
守るべき身は自分の身のみ。

『桐島一人出たって何も変わんないよ』

見たこともない化け物。
言葉だって…きっと通じない。

『わざわざ死にに行くのッ?』

学校への唯一の出入り口は塞がれてしまう。
玄関だって、施錠されてしまって
唯一の入り口の抜け穴だって…もう塞がれてしまう。

『…逃げるのは簡単ですわ』
『何?』
『これが現実だから…抗ってやりたいとは思いません?』

桐島は笑っていた。
とても楽しそうに、子供のように…

『ばっかじゃないのッ』
『あら。私はYukaがこんなに小心者だとは思いませんでしたわ』
『アタシは現実派なのッ』

結局、桐島は学校から去った。





「……」

外は化け物の出歩く場所。
人ではない異形のモノたちの棲み処。
そうなっていることに気付いていながらも
綾瀬は出た、桐島を追うかのように…

「…アタシは…現実派なんだから…」

誰もいない廃工場に小さく響いた声。
それが虚しく自分の耳に残る。
そして、もう戻れないと悟らされる。

「……」





誰も助けに来ない。
自分は何がしたかったのか…

桐島は生きているだろうか?
藤堂たちは今、何をしてるだろうか?
学校に残った黛は……



「…帰りたい…よ」



帰る場所すらなかった。
怯えながら外に出て、しばらくして気付いた。
学校は消滅していた。
そこにあったはずの場所は消えていた。





絶望と恐怖、死と隣り合わせの現実。





ただ綾瀬は待っていた。
敵ではない誰かが来ることを…





END
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