LA - テニス

04-06 携帯連載
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「…今、帰りか?」

背後で響いた声に反応した体は動かない。

全身が粟立ち、息を呑んだ。

振り返ることも出来ず、声すら出ない。

「……そろそろ思い知った方がいいぜ、ゆい」

口を塞がれ、引きずられ、埃の立ち込める場所に倒れた。

真っ暗な場所は、昔いたトコロを鮮明にした。

「跡部を手玉にしてんだな」

「……ッ」

「アイツ、お前の過去を知らねぇんだろ?」

光には進めない。

出口に立つゆえは、私を闇へと追い込む。

陽のあたる場所へは戻れない…


「俺ら、唯一の姉弟だろ?また仲良くしようぜ?」


頭が、体が、覚えている。

記憶が過去を辿り、これから起こることを予知する。



「けいごぉーーーーーー!!!!」










知られてもいい。

軽蔑されてもいい。

ずっと、あの日からずっと…





「………!!!!」





誰かが助けてくれることを願っていた。





「何してやがる…!!」

「見たらわかんだろ?」

「どういう了見だって聞いてだよ!!」

「ああ…アンタは知らないんだよな。コイツはなぁ――…」





例え、それが崩壊に繋がったとしても…





埃まみれの闇の中。

私の記憶はうっすらと消えかかっていた。

だけど、ゆえの声はただ響き、過去が暴かれていく。


"俺の玩具なんだ"


触れられたくなかった。

だけど、助けてもらいたかった。

矛盾していたとしても、ずっと…



「だから何だ?過去?そんなコトはどうだっていい。俺はゆいをお前から解放する!!」



その言葉が聞こえて…

それだけがハッキリと聞こえて…


解放されたい、と。

そう思った。



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