LA - テニス

04-06 携帯連載
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「…ゆい?ゆいだろ?」

「………!!」


全身に粟立つ感覚。

過ぎるのは…昔の私の姿。


「まさかと思って来て見れば…やっぱりお前なんだな」

「ゆえ…」

「苗字まで変えて、今では玉の輿かぁ?」



私は…過去からは解放されないのですか?



「随分、イイ思いしてんだろな。ココに入れるなんざ」

「い…や……」

「俺が教えてやった甲斐あってのコトだろ?」

「ちが……!!」



思い出したくない。

思い出したくない。

思い出したく…



「嫌ーーーーーー!!!!」



誰も止めなかった。

引き裂かれ、汚されても、ただ笑って…

体は傷つき、心も傷つき、感情までも失われた。



消えない過去。

消したい過去。


だから私は……………"人形"





「ゆい!!!」


視界はボヤけても声でわかる。

ただ真っ直ぐに駆けつけた姿は見えなくても…


「……景吾!!!!」


しがみついた体。

甘い香水の香りが私を包むのがわかった。

「…何したんだ?てめぇ…」

「久しぶりに姉に再会したんで…挨拶をしただけなんですが?」

「……姉?」

「ええ、苗字は違いますが。俺たちは戸籍上、姉弟だったですよ」

間違っていない。だけど、間違っている。

だってそうでしょう?

アナタたちはずっと私を……

「……ゆい?」

「少し驚いたみたいで…」

「……みたいだな」

「じゃあ、また改めて話に来るよ…"姉さん"」





一人ではもう立ち上がれない。

歩くことも出来ない。


消えない過去がある限り…

私は"人形"へと戻らないといけない。





"お前は俺の奴隷…だろ?"


すれ違い様に耳元で響いた低い声。

過去の呪縛は晴れないままに、また縛られてゆく…



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