LA - テニス

05-06 PC短編
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光 と 闇 -04-





複雑な想い…


勝ち目のない戦いであるなら

放棄してしまった方が賢い、俺の中の俺がそう呟いた。




















知恵熱だろうか?

久しぶりに熱が出て、風邪をひいた。
動けないわけじゃないけど…家に留まるコトを選択した。


逃げ場のない場所での葛藤。
そんなの…放棄する他になかった。










頭の中でのシュミレーション。
それは昨日の二人から連想される全ての結果。





『千石は彼女とかいるのかな?』



『俺、ゆいちゃんに告白する』





中間にいる俺は…

彼女に『好き』だとも言えず
千石に『俺も志月が好き』だとも言えず

ずっと…隠している。










強きはまず争いを避ける…

そんなカッコいいモノじゃない。



俺はただ逃げただけ。

壊したくない関係と失くしたくない位置がそこにあるから…








目を閉じれば浮かび上がるのは学校の景色。
いつもの教室に千石がやって来て…
志月を見つめる千石、それを見つめる俺。



……後悔?



そんなコトはない。
そんなコト…あるはずがない。







自分が選んだ道。

自分が選んだ選択肢。

今更、後悔なんて…


















眠ることで忘れたかった。


















気付けば時間が経って…





「あ、起きた」


「…千石?」





俺の部屋を物色し、勝手にマンガを読む千石の姿。

それがあまりにも自然なカンジ。




「お見舞いに来たよん」

「……マンガ読みながらか?」

「だって、こうでもしないと癒されないし〜」




――癒されない?




「千石清純、フラれて参りました」




…フラれた?




「つーか、俺が気付かないとでも思ってた?」

「…何をだ?」

「ゆいちゃんのコト…」


読みかけのマンガを伏せて、得意そうな顔。
その表情からはフラれたようなカンジはしない。


「わざわざ譲ってくれるような真似、すんなよ」


一瞬、その一瞬だけが
試合中の…真剣な千石の顔へと変貌した。


「……」

「って、俺も知っておきながら抜け駆けったんだけどね」




気付いていた、それなのに…




「これでおあいこ。だからお前、言わないと殺す」

「……物騒だな」

「俺の予想が当たり。だから悔しいじゃん」




千石の…予想?




「言えよ?」













――ピンポーン。




「来客だ。俺が出てきてやるから寝といて」


千石の好意。
有難く受け取る前に…


「…悪かった」

「お互い様でしょ」

「…かもな」




一言だけ、一言だけ…




「お前と仲が悪くなるのが嫌だった」













『そこまで安い友情だったっけ?』

何度目かのインターフォンに反応して、部屋から降りていった。



-04-
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