LA - テニス

TRAGIC LOVE
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起きたくないんだ。

目覚めたくないんだ。
わかりきっている現実から…

目を背けていたいんだ。










「ジロー先輩ッ」


ホラ…君は俺のところに来てくれるんだ。
アイツのところじゃなくて…


「お弁当、作ってきたんで食べて下さいね」


笑ってくれる。
だから俺も彼女に笑い返せる。
素直なままに…本当に。


「…大好き…」











「おい、ジロッ!!」

「んぁ…?」

「練習中に寝るなッ」


ネットを挟んだ向こう側、宍戸の声が聞こえた。
ボールは横を擦り抜けて…
そのままコートの端へと移動していた。


「……やっぱり眠い」


動き始めた。
今度は邪魔されない場所へ


「おいッ?」

「じゃーね」


誰にも止められないように走って…
コートにラケットだけを残してただ走った。





夢を見ていたいんだ。





生々しい夢の続き。
それだけを見るためだけに、俺はこの世界に参加しているだけ。

だから…

誰も邪魔しないで?



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