調査官とは、担当の少年を訪ね事件についての本人の反省度合いや考え、
またいろんな話を交えて、
少年自身を観察し、
家裁の裁判官にあらかじめ伝達するという役割を果たす。
家族構成に始まって非行歴や事件の詳細、
また今後どのような措置をとるのが一番よいのかを検討し決定するのが審判である。
大人と違い裁判の代わりに審判と呼び、またそれが行われるまでに拘置出来るのは最高で28日間と決まっているのでバタバタと事を進めなくてはならない。
自分的には母親も言っていたように初犯なので今回は必ずすぐに帰れると思っていた。
ほんの一ヶ月間だけの事だからとタカをくくっていたからこそ毎日それなりに楽しく、何の不安もない生活が送れていたのだろう。
逮捕後まもない取調中に
「最初は四週間で帰れるんでしょう??」
と自分が軽くたずねたところ刑事は
「いや、わからんぞ〜年少考えとった方がえんちゃうか〜」と答えたので勝手にそれを冗談程度に受け止め納得していたという事があった。
あれはやはり普通に脅しでも何でもなかった事が後に分かるわけである。
一度か二度、面会に訪れた両親と今度は家裁で会う。
審判に三人並んで出廷だ。
裁判官からの質問に順調に返答し、両親へもそれぞれに何か質問をしていた。
想像していたよりだいぶ狭い部屋だった。
裁判官を筆頭に例の調査官、書記みたいな人、が向き合うように並び鑑別の先生が後ろで傍聴していた。
そしてとうとう自分にとっては最後の山場を迎える。
一旦部屋を出て審議結果を待つ。
時間が経つにつれそれまでの勝手な自信が少しずつすり減っていくのが分かった。
再度中へ通され椅子にかける。
「あなたを、中等少年院送致とします。これは10ヶ月以上2年未満と定められていますので、そこでいろいろ頑張って………。」
はじめの方を聞いた後はハッキリと覚えていない。
ただ現実を理解しようと必死だったのだと思う。
見事に打ち砕かれ、涙を流す自分がいた。
全てが終わるとまた鑑別戻りとなる。
その時物心ついて以降初めて、母親とハグしたのが印象的だった。
母親も泣いていた。
でも父親の方を見る勇気はなかった。
自分の犯した罪が全て明らかになってしまい、継父である父とは顔をちゃんと合わせられなかった。
鑑別内では、審判のために外へ出た人がそのまま家へ帰れたか年少行きかを予め知る事が出来る。
昼食時に、審判に出た人の分があるか無いかで一目瞭然。
みんなが昼食を終えた頃、何とも言われぬ顔で再び現れるのだ。