知らせは急だった。

何やら向こう側もバタバタしているらしくとにかく慌ただしく荷物を元のかごになおした。

内心ワクワクしだしていた。

向かった先には引率の先生男女二人がいつもの制服ではなくスーツで待っていた。

自分も服を着替え自前の荷物を新しい紙袋に詰め替えるなどをして最後は手錠をはめられる。

どうやっていくのかと尋ねると電車で乗り継ぎ新幹線で行くとの事。

もちろん一般の人達の中に紛れ込む訳だから手錠など普通に考えて外から見えるようなことは出来ない。

しかし季節は夏。

七月半ばの暑さである。

自分の服は七分袖だったが丸見えは変わらないので所にある薄い生地の長袖パーカーを着せられる。
お腹の所に両手を入れられるポケットがあるのだがどういい順番で手錠をかけちゃんとポケットに納める事が出来るのかあーでもないこーでもないとみんなで考えやっと思い通りの形が完成し外へ出る。

電車内では流石におかしな三人やなぁという目で周りは見ていたがその後先生は驚くほど優しく新幹線の構内で好きな弁当を食べて良いと言ったので迷わず鰻重を頼んだ。

三時間の旅を終え久々の地元に感動する。

先生達は土地勘が皆無のためこっちですよと自分が進むと血相を変えて腕を掴み離さずキョロキョロ確かめながらこっちの鑑別の職員が迎えに来ているはずの待ち合わせ場所へと歩いた。

少ししてそれらしき普通乗用車が止まったのでみな乗り込む。

先生どうしで普通の会話を交わし合い次なる寝床に到着。

やはり寸分田舎なためにスケールは比ではなく同時に先生の対応そのものも寛容というか緩いといった印象でその様子に一番驚いたのは他でもない自分と一緒に遙々やってきた先生二人であった。

しかもその日から雑房入りになった。

といっても先人は一人しかいなかったので二人部屋である。
それまでの生活とは打って変わってけっこう好きなように話が出来る。

いくつか決まりに違いはあるものの、のんびりと穏やかな時間を過ごす事間違いないなと思った。

その数日後、夕食に見事に大きな鰻が登場してがっかりしたのは言うまでもない。

しかも二回も…。

自分の地元がどこなのか考えれば鰻重は踏みとどまっていただろうに。

ここでも同じ健康診断をし、残りの三週間と少しの間は家裁の調査官なる人との面接が幾度に渡って行われ家族との面会や、知り合いに手紙を出し状況を説明するなどそれまでとは全く違う日々を過ごした。


新入りも増え三人での楽しい生活はあっと言う間に過ぎていった。

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