物語 裏

□離さない
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「なあ千鶴。話したいことがあるんだ」

「話したいこと…?」










『離さない』










私は平助君に呼ばれて少し前に彼の部屋へ来た。
適当に座って、と言われるがままに座り、そして平助君の話というのを待つ。
彼はじっと私の顔を見つめて、目を細めて呟いた。

「なあ千鶴」

「うん」

「今日一緒にいた男、誰?」

「……え?」

一緒にいた男…?

「えっと…一緒にいた男って?屯所は男の人ばっかりだし、どの人のことか、分からないよ…?」

「午前中に中庭で一緒にいた奴」

午前中に中庭───

「あっ」

思い出した。
私が洗濯物を干そうとしたとき、偶然通りがかった一人の平隊士さんが重そうだからと手伝ってくれた。

「えっと…楠(くすのき)さんだよ。洗濯物を干すの、手伝ってくれて……」

「…ふうん」

「あの、平助君……」

何だか…

「機嫌、悪い?」

問うと、平助君らしからぬ鋭い眼差しが寄越された。
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