BSR夢

□被虐的嗜好者【短編集】
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本当だったらこの立場は私のはずなのに…でもこれでアイツも殴りに…



ふっ、と視線を前向けるともう目の前に大きな拳が迫ってきていた。
溝に拳が入り離れた場所に吹き飛ばされる。
上手く受身が取れず地面のあちこちに身体をぶつけながら止まる。
起き上がると同時に、胃の中のモノと生臭い血が口からこぼれ出た。

軽く口を拭き、立ち上がるとうっすらと涙を浮かべた家康の姿があった。


泣かすつもりは無かったんだけどな…それにしても随分と一撃が重かったな。中身が出るまでそんなに時間はかからなさそうだな。



「ワシの首を取りに来たなら、ワシだけを狙えばいいだろう!!!」


「邪魔なものは滅す、これ私の考えであって常識ね。」


「お前は此処でわしの仲間のように散ってくれ…」



温厚な性格の家康も流石にこれは許せなかったらしい


はぁ、その怒りを私にぶつけて…、そして私を滅茶苦茶にして…!!


名無しさんは必死に笑を殺し家康を見つめる
家康は泣き顔を見られたくないのかフードを深くかぶり戦闘体制に入る。

家康が思いっきり地面を殴ると岩が飛び出し、名無しさんの身体を空中に投げ飛ばす。
今の衝撃で多分、二、三本の骨は逝ったであろう。
それと同時に家康も飛び上がり下からまた背中を突く。『バキ』と言う音が微かに耳に届いた。

さらに上に跳びそうになるが服の襟をつかまれ思いっきり下に向って投げられる。
先ほどの攻撃により飛び出した岩に頭から突っ込む。その衝撃で周りの岩も崩れ、名無しさんの身体は瓦礫の下に埋まってしまった…



「安らかに眠れ、そして新たな絆を見つけるんだ、絶対に切れぬ絆を…」


少し涙声で告げ、その場を去ろうとしたその時、がれき下から何事も無かったかのように名無しさんはでてきた。
これには流石の家康も驚きを隠せない…

普通の人間ならまず生きては無いだろう、だが名無しさんは『不死の身体』の持ち主。
死に方は己でも分かっていない…



「普通だったらこれ死んでるよ。ほら骨だって突きで出るし、でもこれは私にとっては快感を得る為の唯一の方法でしかないんだけどね」


「快感だと?」


「そう、私は被虐的思考者なの。それもかなり重度のね…今日は結構楽しめたから『オマケ』しておくよ」



パチンと指を鳴らすと同時に名無しさんの姿は消え、その場に倒れていた兵士達が息を吹き返す。

これは情けなのか、それとも…


真実を知るのはこれをやった本人しか分からない…




(情け…?)



(そんなものじゃない、これは)



(ただの下準備に過ぎない)





家康編 end
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