Sweet

□Lonely Night
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しん、と静まり返った夜は絶好のチャンス。
ブルーベルは待ち合わせの場所に足を走らせた。
一秒でも早く骸の元に着けるように最高速度で夜道を裸足のまま走った。
アジトからかなり距離があるのに関わらず、骸よりも先に到着したブルーベルは暇そうに夜空を眺めていた。




今か今かと待ち続けるのだが、骸は一向に来る気配を見せない。
何してるの。ブルーベルをこんなに待たせていいと思ってるのかしら。
いや、そんなに待たされてはいない。だって、高い月はまだあんなに高く高く上がっているんだから。
手を月に翳せば月の柔らかい光が手が邪魔をして途切れる。
邪魔が入れば光が途切れるのは当たり前で…。



ブルーベルと骸は会っちゃいけない関係。
何でかって言ったら敵だからに決まってる。
ブルーベルは骸が好きで、多分…骸もブルーベルが好きなはず。
好き好き同士で隔てている壁は互いに違うマフィアに所属しているから。
…なーんて言ったらマフィア嫌いな骸は嫌そうな顔をするんだけど、骸はボンゴレファミリーに違いないもん。

今見えてる月が私達の関係を模しているようでブルーベルには恨めしく思えた。
ぼんやりと月を眺めているといつの間にか高い杉の木の裏に差し掛かろうとしていた月に時間がそれなりに経過していることを思い知らされた。
まだ来ない。


何だか色々考えていると寂しくて夜空に浮かぶ月が同情してるようでイライラがピークに達した時、背後に人の気配がした。
…この感じは。







「むくろ!」





「少々遅れたようですね。…待ちましたか?」






ブルーベルの頭に手を置いて撫でるのだが、孤独を感じピークに達したイライラはそう簡単におさまらない。
ブルーベルは骸の問い掛けには敢えてスルーして何も答えなかった。







「…クフフ。待ったんですね?」






余裕ぶってる骸がどうしてか許せなかった。
ブルーベルはジロリと骸を見据えると腕を引っ張り私の方へ引き寄せ、頬に掠める程度のキスをした。
骸は一瞬だけビックリした顔をしたけど、直ぐにいつもの穏やかな表情をしていた。
まだ余裕あるんだ?


そんな余裕なんてブルーベルが崩してあげる。
それで、ブルーベルしか知らない骸を見せてよ。
そのまま唇にキスをして無理に舌を押し入れてやる。
お互いにこんなことは他では未経験だし、キスだってこれまでにしてきたって言っても軽いものだけ。
下手くそだから苦しそうに酸素を求めるため離れようとした骸だけど、離してやるもんか。


ブルーベル自身も正直苦しかったけど離さない。
月が杉に隠れた頃に漸く唇を離してやった。

見ると骸は呼吸を乱してほんのりと頬を赤く染めていた。
夜の光りで多少は隠れてもそれが分かるってことは昼間に見たらもっと真っ赤なんだ。




ねえ、骸。
これからまた、待ち合わせに遅れたりしたら今日みたいなお仕置きしてあげるからね。














Lonely Night

孤独な夜は

少女を野獣へと

変化させる








fin.
 

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