小説

□これも、日常
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通い慣れた道を通って、そして
通い慣れた古びたビルに入る。
見慣れた小汚いドアのドアノブを回せば
これまた見慣れた奴の顔が視界に入る

「こんにちは。ネウロ」
私はいつものようにそう言って、ギィと
錆び付いた音がする扉を閉めて
ソファにポフっと座った。
それをネウロは横目でちらりと見て
ついさっきまで読んでいたであろう
新聞に再び視線を落とす。

これといって、会話はない。
ただ沈黙に包まれる事務所
弥子がいればネウロは奴隷だとか罵って
蹴ったり縛って遊んでるけど、私には
そんな事をしない。二人っきりになると
お互いあまり喋らなかったり…
それが、日常である。




が、しかし結構な時間が経っても会話が
一つもないのもつまらない。
弥子は私用でまだこないみたいだし
相変わらずのネウロは活字を目で追っている。

「ねえ、ネウロ?」
痺れを切らして私から話しかけてみる。
これも、まあ日常的になっている
「…なんだ。」
新聞をぺらりと捲るネウロ
「暇なの、遊ばない?」
「フン…貴様と遊んでる程暇ではない」
新聞から目も話さず一蹴された会話
「えぇーいいじゃん。つまらないよ」
「うるさい黙れ。昼寝でもしていろ」
あらあら、粘ってみたけど構ってくれそうにありませんね…
こうなったら仕方ない。

私は鞄から携帯電話を取り出す。
その動きを見てネウロは少しだけ
眉をピクリと動かしその後眉間に
皺を刻ませる。

「じゃあ、笹塚さん所いこ〜っと」
携帯のボタンをカチカチ操作して
通話ボタンを押そうとすると
待て、なんてネウロが言うもんだから
少し意地悪に笑って

「なあに?」

なんて聞き返してみる。そうすると
「いいだろう。構ってやる」
って新聞を机に置いて私のところまで
来て隣にどっかりと座る
「あら、忙しいんじゃないの?ネウロ、私笹塚さんと遊ぶからいいわよ」
「黙れと言っているだろうが。このノミが」
なんて言っちゃって、ふふっと笑うと
ネウロは少し私を睨みつけて
グイッと顎を持ち上げて私にキスをする
触れるだけのキス

「クク…名無しさん、笹塚の所に行くんじゃなかったのか?」
負けじとネウロも意地悪な笑みを浮かべる
嗚呼、完全に私の負けね。

「ふふっ…気が変わったわ」

そう言うと同時にキスのシャワーが降りかかってきた!




これも、日常
(そのどれもが、非常。)












2010.07.30

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