書物

□風邪
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「へっくしょんっっ!!!」

「おう蛇骨、大丈夫かぁ?」


屋敷中に響く程豪快なくしゃみをかましたのは、七人隊斬り込み隊長蛇骨(様)。

普段どこに行っても子供の様に元気にはしゃぎまわっている彼だが、今日は敷かれた布団に納まり大人しく寝込んでいた。


「う〜…寒ぃよ〜…頭痛ぇよ〜…」

「ったく、あんな格好で外うろつきやがって…そりゃ風邪も引くわけだ」


蛇骨の横で胡坐を掻き呆れて溜め息をつくのは首領の蛮骨。

先日蛇骨は殺生丸と戦った際に着物を破られ、北の地で過ごすには耐えられない姿で外をうろついていた。

その後代わりの着物を見つけたのはいいが、時すでに遅く、乗っ取った屋敷に戻る頃には熱を出していた。


「う〜ん…兄貴ぃ〜…」

「なんだよ」

「俺はもう駄目だ…きっと里の流行り病に罹っちまったんだ……」

「はぁ?」

「後のことは任せた…ぜ…」

「ただの風邪だって言ってんだろ、んな弱気になんなよ」

「あ〜…あったま痛ぇ…」

「蛇骨にとっては初めての風邪だ、辛いのは無理もねぇ」

「あ、とーさん」

「だからとーさんって言うなっ!!」

「うるせぇよ、おとーさん…頭に響くだろ〜…」

「あぁ、悪かったな……ってお前もっ!!!」


静かに襖を開け部屋に入ってきたのは父役こと睡骨。


「それより睡骨、薬は出来たのか?」

「まぁな……ただ」


睡骨が蛮骨に見せたのは深い深い緑色の粉薬。


「…不味そうだな」

「薬が美味いわけないだろ」

「まぁ…そうなんだけどよ」

「あれ〜睡骨おめぇ善人面じゃねぇのに…薬とか作れんのか〜?」

「おう、アイツは俺で俺はアイツだ、多少の知識と技術は俺ん中にも残ってるぜ」

「へぇ〜」

「んじゃ大兄貴、後は頼んだぜ」

「あぁ、任せとけ」


薬と水を渡して睡骨は部屋を後にした。


(……蛇骨が素直にあの薬を飲めばいいけどな……)


たった1つの不安を残して…。
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