捧げ物

□浴場、欲情?
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「蛇骨、今晩いいか?」


広い部屋でゴロゴロしながら蛮骨が問うた。


「ん〜?いいよ」


そんな蛮骨の頭を撫でながら蛇骨は微笑んで答えた。
蛮骨達は先日の戦で戦果を上げ、気分を良くした雇主の城主に広く豪華な屋敷での休暇を与えてもらえた。
次の行き先が決まるまで彼らはここで疲れた体を休めているのだ。


「またですか大兄貴」


呆れた顔で煉骨は溜め息をついた。
また、というのもここ数日間蛮骨と蛇骨は毎晩のように情を交わしているからだった。


「仲が良いのは分かったから、皆に迷惑掛けんなよ」

「迷惑?」

「掛けたっけ?んなもん」


睡骨の注意に2人は気の抜けた返事をした。
ガクッと頭を垂れる睡骨を見兼ねて煉骨は続けた。


「毎晩毎晩あれだけ大声上げといて…」

「よく掛けたっけ?なんて言えたな、お前」


蛮骨と蛇骨は身体の相性がとてつもなく良かった。
その為、夜伽を始めると蛇骨は声を押さえきれず、煉骨達の部屋にまでその啼き声を響き渡らせているのだ。
そして煉骨達はその声が原因で毎晩眠りを妨げられていた。


「ったく飽きもせずに毎晩毎晩…」

「あ〜もう分かったから!そうネチネチ責めんなって〜」

「仕方ないだろ?俺と蛇骨の身体は繋がる為にあるんだからよ」

「はぁ、そうですか…」


呆れて溜め息しかつかない煉骨を横目に蛮骨は考え始めた。


(とは言え…)


仲間に迷惑を掛けているならどうにかするしかない。
何処か他に場所はないものか、と。


(………そっか!部屋じゃなけりゃいいんだ!!)


******


「はあ〜…生き返る〜」

「兄貴親父臭ぇ」

「うっせぇな、気持ち良いんだから仕方ねぇだろ」

「はいはい」


クスッと笑って蛇骨は肩に湯を掛ける。
この城の城主自慢の大浴場、蛮骨と蛇骨はこれに漬かっていた。
広々とした浴場、外を隔てる柵から身を乗り出せば夜でも賑わう城下町がキラキラ輝いて絶景だった。
これも城を山の上に建てたお陰だろう。
見上げれば広がる星空。
天体に興味のない2人からすればただの飾りにしかならないのだろうが。


「それにしても珍しいな」

「なにが?」

「兄貴が風呂に誘うなんてさ…何のつもり?」

「決まってんだろ」


クスッと笑って寄り添う蛇骨の肩を抱き蛮骨は耳元で囁く。
鼻を掠めた蛇骨の香りは甘く、のぼせたような感覚に陥る。


「良い声聞かせてくれよ?」


耳元に感じる蛮骨の低く優しい声。
うっとりと聞きながら蛇骨も同じように蛮骨の耳元で囁いた。


「任せてくれよ」


顔を離すと思わず笑ってしまう。
微笑み合い、そしてどちらともなく口付けを交わした。


「ん……ぅん…」


蛇骨の口内を舐め回しながらうっすら目を開けるとほのかに頬を赤くしている顔が見えた。
興奮かのぼせたのか分からないが。
唇を離すと甘く息を吐いて頭を蛮骨の胸にこんっと預ける。


「兄貴の口付け好きだ〜」

「そりゃどうも」

「兄貴は〜?」


上目遣いでこちらを見上げる。
濡れた手で蛮骨の頬を撫でながら蛇骨は続けた。


「俺の口付け、好き?」


頬を撫でる手を取り、甲に軽く唇を落とす。
そして微笑み掛けて蛮骨は答えた。


「口付けも、好きだぜ」


それを聞いた時の蛇骨の笑顔は今までで一番綺麗で、妖艶に見えた。

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