ALLEGORY-BLUE

□木こりと鳥
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緑豊かな森に一人の木こりが住んでおりました。
心優しい木こり。
鳥達が巣を作る木は決して伐りませんでした。
枝で遊ぶ鳥達を追い払う事もできず、鳥達が去るのを気長に待ちました。
そんな心優しい木こりに、木こり仲間達は一緒に仕事をするのは無理だと言いました。
心優しい木こりは森の奥深くで暮らすことにしました。
木こりには守らなければいけない決まりがありました。
若い木は伐ってはいけないのです。
成長しきった木や病気の木、年老いた木しか伐る事ができません。
でも病気の木や、年老いた木は高く売れません。
木こり達は皆で協力し、成長しきった立派な大木を伐るのです。
しかし心優しい木こりは立派な木を伐る事ができません。
一人では危険だからです。
でも病気の木や年老いた木も伐る事ができません。
これらの木はどこに倒れるかわからないからです。
心優しい木こりは、病気の木や年老いた木の枝を伐って生活していました。
ひっそりと慎ましく。
それでも心優しい木こりは幸せでした。
愛する妻と息子がいたからです。
そして木こりの優しい心に感謝した鳥達がいつも遊びに来てくれるからです。

ある日心優しい木こりはいつものように年老いた木の枝を伐っていました。
するとそこへ二羽の鳥の夫婦が遊びにやって来ました。
心優しい木こりの邪魔をしないよう、立派な木の枝にとまりおしゃべりを始めました。
心優しい木こりは時々おしゃべりに加わりながら、楽しく耳を傾けていました。
そして少しの間おしゃべりに夢中になってしまいました。
すると突然ドサッという音がし、
楽しそうにしていた鳥の夫婦が叫びました。
心優しい木こりは驚いて年老いた木に目を向けました。
そして心優しい木こりもまた叫びました。
『何て事を…!』
心優しい木こりが伐った枝には雛達がいたのです。
慌てて雛達を抱き上げる心優しい木こり。
でももう雛達は息をしていませんでした。
押し潰されたような姿の雛達。
心優しい木こりは雛を抱いたまま泣き叫びました。
いつまでそうしていたのでしょう。
心配した妻が迎えに来、家に帰るまでの間、心優しい木こりは泣き続けました。
次の日も、またその次の日も。
椅子に座ったまま泣き続けました。
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