ALLEGORY-BLUE

□光る石
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風がそよぎ、草がゆれる穏やかな草原で、鳥の夫婦は微かに光る小さな石を拾いました。

巣では雛鳥達が先を争うように餌をねだっています。 母鳥はその中に拾った石をそっと置きました。

次の朝、仲の良いリスが訪ねて来て言いました。
『綺麗な石だこと』
母鳥は嬉しくて、外から見える所に石を少し動かしました。

毎日何度も何度も雛達のために餌を捕る事に疲れていた母鳥は、リスの言葉で少し元気になりました。
そして愛しそうに石をなで、綺麗だと褒めてやりました。
すると石の光が少し増したように見えました。

次の朝、通りがかりのネズミが言いました。
『素敵な石ね』
母鳥は皆に見える所まで石を動かし、大切そうに撫でながらまた褒めてやりました。
すると石は離れた所からでも分かるほど輝きだしました。

母鳥は石に夢中になりました。
誰も彼もが褒めてくれる石。
皆が羨む石。

母鳥は雛達の餌を捕る間も石の事ばかり考えていました。
父鳥は石に夢中な母鳥の事が心配になりましたが、何も言えませんでした。
母鳥が元気に餌を捕るようになったからです。

いつものように母鳥が愛おしく石を撫でていると、風が言いました、
『その石を愛でてはいけません』
母鳥は聞こえぬふりをしました。

次の夜、また風が言いました、
『その石は遠くにやらねばなりません』
母鳥は風に言いました、
『これはわたしのものです』

次の夜、また風が言いました、
『その石は壊さなければいけません』
母鳥は風を恨みました。


次の朝、風が通りがかると巣には母鳥も父鳥も雛鳥達も居ませんでした。
残っているのはちぎれたような羽だけ。
風は後悔しました。もっと早く忠告をするべきだったと。

それから風は歌い続けました。
『光る石に気を付けなさい。光にのみ込まれぬように。』

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