ぶん

□お土産がほしいのならば
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「斎藤さん!!!」



そう言って俺のもとへ駆けてくる千鶴。
ぽわぽわとした雰囲気の千鶴を見てると俺まで癒される。




すると、俺の後ろから見知った声が。







「ただいま〜千鶴ちゃん」







「総司・・・今帰ったのか?」







俺から見るに、どうみてもチャラ男な総司がひらひらと手を振りながら立っていた。




「あっ・・・お、お帰りなさい・・・総司さん・・・」



顔を赤くしながら、俺の目の前に立つ男の下の名前を呼ぶ。




「・・・・何故総司を下の名前で呼ぶ」




俺は怒りで震えながらも呟く。






「いや、あの・・・その」
「僕が巡察帰りにお土産を買ってきてあげる代わりに下の名前で呼ぶことにしたんだよ、一君」




にっこにこと笑顔を浮かべながら立つ、件の男を今すぐにでも斬り殺したくなる。








「・・・千鶴、お前はそんなに土産がほしいのか?」



「・・・・総司さんは、甘いもの好きだし・・・お菓子の趣味も・・・合うから・・・」



「そーそー、そーゆーことだから!・・・もしかして一君、僕に嫉妬してる?」





総司に痛いところをつかれ、俺はびくっとする。




「いやっ、そんなわけはない」



平常心を取り戻しつつも、強く言い切ると、千鶴は少しだけ寂しそうな顔をした。


「・・・・そうですよね」



俺はしまった、と思っても遅かった。すたこらと千鶴はその場から去っていく。


愕然としている俺を見て、悪魔のような笑みを浮かべ総司は言う。




「ざーんねーん、一君、千鶴ちゃんにフラレちゃったね!」




俺はそんな総司の言葉も耳に入らず、庭先で膝をついた。
















3日後、巡察当番が回ってくる。



俺は三番隊を率いて、京の町を巡察する。
すると、通りの裏に今まで知らなかった漬け物屋があることを知った。




俺は、三番隊の組員たちに「先に戻っていろ」と告げ、漬け物屋にそそくさと入っていった。









それから半時くらい経ち。




俺は屯所の前でうろうろしていた。






この買った沢庵を土産として千鶴に渡すべきか、否か・・・!





総司と比べるとあまりに渋い、渋すぎる。



こんなものをもらっても千鶴も困るだろうと、俺は仕方なく副長に届けようとしたところだった。









俺の目の前に千鶴がいた。







「あ、あれ、斎藤さんじゃないですか!」





千鶴はにっこりと笑みを浮かべて近づいてくる。





「ずいぶん遅かったですね、心配してましたよ?」





俺は慌てて沢庵の入った袋を後ろに隠した。

しかし、千鶴は見逃さない。




「斎藤さん、それなんですか!?」



俺は仕方なく沢庵を渡す。




「・・・・お前への土産だ。俺は総司みたいに甘いものには詳しくないからっ・・・た、沢庵を買ってきた」



自分でも声が震えているのがわかった。




千鶴は丸い目をさらに丸くする。




「有り難うございます!さっき、沖田さんからお饅頭もらってしょっぱいものが食べたいところだったんですよ!」



にこっと笑って千鶴は沢庵の入った袋を受け取った。



・・・・・そういえば、総司さん、ではないのか?




俺はそう思い、千鶴に尋ねた。



「総司さん、ではないのか?」



「あぁ、あれは−・・・・沖田さんの悪戯だったんですよね。斎藤さんが嫉妬するところを見てみたいって、言い出して・・・・」








無言になる俺を見て、心配そうに声をかける千鶴。


「あの・・・怒ってますか?」



「いや、お前には怒っていない。総司に怒っているだけだ」




「・・・・ごめんなさい、一さん」





そのまま立ち去ろうとしていた俺に衝撃の言葉がかけられた。


俺がゆっくりと振り向くと、もう千鶴の姿はなかった。









これだから、俺は恋をやめられない。












!!

















































風光る読んでたからかもしれないが、どことなく斎藤さんがファニーフェイスw
・・・・おわれ。

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