年齢制限

□美しすぎる君へ
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その女は今から俺に殺されるということをみじんもわかっていないようだった


後ろ手にナイフを隠しそっと女に近づく俺

無邪気に笑いながら俺の部屋のものを物色する女



「ねぇこれ何に使うの?」


笑顔のままクロームがそう尋ねても
俺はなにも言わない



「なんで黙ってるのよベルったら」



彼女は特に気分を害した様子もないようで
さっきみたいにベッドに寝転んだ



あいつが俺以外を見てるのもしってるし
あいつが俺以外の男に抱かれてるのもしってる



だから殺す


お前が嫌いなんじゃなくて、俺以外の誰かを愛するお前が嫌いなだけ



「ベル?」


いつになく真剣な顔をしながらクロームがきいた


俺は「なんでもないよ」と言いながらまた薄い笑顔を浮かべる



「もしかしてベル、しってるのかな」


俺はすぐに「浮気」のことだと気づいた




「知ってるよ」



俺は薄い笑顔を浮かべたままでそう笑った



「ベルは私のこと許してくれないよねたぶん」


彼女は特に何も気にしていないようにいつもの調子で言って
ポケットから銃を取り出す




「なら、殺してあげるよ」



「私のことを許してくれないベルなんて」




「ねぇ死んで?」



そう言いながら引きがねに手をかけるクロームが

今まで見たなかで一番美しくて



俺は言葉を失って



俺はそのまま薄い微笑みを遺したままで




背中から倒れた






ぐちゃ、という音がして

あぁ俺のナイフは俺を刺したのか

と気づいた






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