復活文

□ずっとずっと大切な君へ
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お前はもういない
俺が愛したお前はもういない



俺は溜息をつきながら、
ふと目尻にたまった涙を拭き取った



なんてざまだ、と自分でも思う
この俺が女で泣くだなんて、と口に出せば思わず笑みがこぼれた



涙混じりの笑いはささやかな風によってかき消されて
風がやむと同時に俺の意識もだんだんはっきりしてきた




1人の人間が亡くなるなんて、ここでは日常茶飯事
別に気にすることじゃない、と俺は自分自身を慰めながら
いつものように刀を取り出して磨き始める




ふと


刀に反射した自分の顔が
今にも泣きそうだと気づいた



あぁ俺にこんな顔させられるのはお前だけだったんだと
彼女に俺は言えたのだろうか



俺は少しだけ、目を閉じて
彼女の顔を思い出す



笑顔の彼女
怒った彼女
泣いた彼女

すべてがいきいきと浮かぶ



今にも、
「斎藤さん!」
と笑いかけそうだった


まるでつかめそうなくらい近くに、鮮明に
こんな風にみえても、ほんとうはつかめないと知っているのに



もうやめてくれ、と俺は苦しそうに声を出した
そのとたん、一瞬にして彼女の顔たちは消えていった





でも、
最後に一瞬見えた彼女は
いつものままの笑顔で
「さようなら」
と言っているようにみえた




こんなに恋が苦しいだなんて
お前は一生わからないのだろうな

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