復活文

□お前を遺して逝く
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オレはいつものように任務を終えて、ヴァリアー本部に戻ってきていた。



ぱたぱたと駆け寄る影ひとつ。



「お、おかえりなさい・・・ベル」



「ただいま」




オレは駆け寄ってきたクロームの頭を軽く撫でながらそうつぶやいた。



すると、ルッスーリアがオレの前を通りかかった。



「あら〜、おかえりベルちゃん・・・って、どーしたのよ!?服に血がにじんでるわよ?」




ルッスーリアがオレに指指した箇所を見ると、確かに血がにじんでいた。



「・・・ベルだいじょうぶ?手当したほうがいいよ・・・?」


「だいじょーぶだいじょーぶ、これくらいなめときゃ治るって!」




オレはそのクロームのけなげな声にクラッときながらも笑顔を向けた。








そのときまでは、なにも気づいていなかった。






状況が急変したのは、それから二週間後のことだった。





どうも、あのときの傷がぐじぐじ疼いた。
あのときには痛みはなかったはずなのに。




オレは任務の間を縫って病院へと向かう。




そこで告げられたのはあまりに残酷すぎる結末だった。






「・・・破傷風ですね。もって、あと二ヶ月といったところでしょうか」




淡々と医者はそうオレに告げた。





「・・・は?どーゆーことだよ?ちゃんと一から説明しろよ・・・っいたっ・・・!」



ただ勢いよく立ち上がっただけなのに、さすような痛みがオレの傷口、いや体全体を襲った。



「あぁ・・・・、無理はなさらないで。おそらく、あなたが以前傷を受けたところをきちんと治療もせずにほっといたでしょう?」



そう言われると確かに思い当たる。




『なめときゃ治るって!』




「その傷に破傷風菌が入り込んだんでしょう。よく、ここまで我慢できたものだ」




「・・・もって二ヶ月っつったか?」





「ええ、もって、ですからね。あなたの意識次第ではもう少し早まるかもしれない」




その後の医者の言葉は何一つオレの耳には入らなかった。




ただ、あと二ヶ月でオレの命がつきる、ということを信じられなかった。








病院から戻ると、オレはすぐにボスのもとへと向かった。





「・・・なんだ、ベル」




いつもと同じ風景。でも、オレにとっては本当に貴重なこの空間。




「あのさ・・・・ボス、話があんだけど・・・」











オレは、医者から聞いたことをボスに全て話した。



するとボスは案外落ち着いていた。




「そうか、じゃあ明日からお前の任務の量を減らす。だから、お前は悔いのない余生を送れ」






でも、オレはあいつにだけはオレの余生のことを知られたくなかった。




「いや、任務の量はこのままでいいよ。だから、クロームには何も言わないでくんね?」













その後もオレはいつもと変わらない任務をこなし続け、クロームもオレの変化には何一つ気づいていないようだった。









でも、そろそろ、2ヶ月が過ぎようとしていた。





今までとは違い、いちいち任務に出るだけでもつらくなる。
人を殺すだけでも一苦労だ。




ちょっとでも走ると息が上がってしばらくは呼吸もままならない。

そんなオレの姿にクロームも少なからず不安を抱いているようだった。






そんな夜だった。



オレは任務のため本部を出る。
ちょっと歩いただけでも立ちくらみがオレを襲う。
階段を下りると、呼吸が荒くなり胸が苦しくなった。




そろそろ、本格的にやべぇ・・かも。



とふと思ったときだった。




前から人影を感じて慌ててナイフを構えた。






いつもと同じ暗殺対象の護衛を殺す。







ひとり、ふたり、さんにんと切り裂いていくうちに、オレは任務中にもかかわらず地面にひざをつけてしまった。





「・・・?」



「ベルフェゴール隊長!?」



「だ、大丈夫ですか!?」




立ち上がろうとしても全く足に力が入らない。
そのまましゃがみこんでしまう。





「・・・・ちっ、くしょー・・・・」




力なくその場にへたりこむと、後ろから誰かに肩をつかまれた。





殺られる・・・!



はじめてそう感じた。







でも、オレの肩をつかんでいたのはボスだった。





「・・・・なにへたりこんでんだ、おらっ立て!!」



ボスは乱暴にオレを立ち上がらせる。


「・・・お前、自分でももうわかってるとは思うが・・・・」







「もうオレ死ぬんだろ?」





いつもみたいにオレは二カッと笑いながらそう言った。



そんなオレをみてボスは苦虫をかみつぶしたかのような顔をする。





「・・・ここはオレが殺る。いいから、てめぇは早く女のもとへ行ってこい!!!」





そう強くボスは言い切ると、銃を構え相手に向かって強く放った。







「・・・ボス・・迷惑かけちまって・・・ごめんな・・・」






オレはふらふらとした足取りながらも敵に見つからないような路地へと身を隠した。





もう、本部まで戻るのは無理そうだった。





オレは上着のポケットから携帯電話を取り出し、電話帳の「か行」をあたる。





『クローム』と書かれたページを見つけると、ほっと一息つきながら番号を押した。





しばらくのコール音の後、聞き慣れた声がした。




「もしもし・・・ベル?」




「あ、クロームだよな?オレ」




「どうしたの?今任務中じゃないの・・・?」



相変わらずのクロームのとろけるような声。
オレはその声を聞いただけでもう、しんでもいいと思った。





「あのさ・・・クロームはオレのこと好き?」



「・・・・なんで?」




「いいから!オレのこと好きなの?」



オレの強い口調にクロームは少し時間をおいてから、返事をした。



「好きだよ。ベルのことが大好きだよ」



オレはその言葉を聞けただけでもうよかった。





「・・・・なぁ、クローム。オレ、今までクロームに迷惑ばっかかけちまったよな。・・・・たぶん、またいろいろ迷惑かけちまう」




オレはそこまで言うと、一度言葉を切ってから、言葉をつないだ。




「それでも、オレはずっとお前のことがすきだよ、クローム」






「べ、ベル!?どうしたの!?なにいってるの!?」



オレはクロームの質問には答えずにそのまま電話を切った。






「オレは・・・お前と出逢えて・・・・幸せだったよ・・・クローム」




オレは一言そう呟くと路地の壁にもたれかかった。思わずほろりと涙がこぼれた。







お前と出会うために生まれてきたんなら、こんなに早く死んでもまぁいいぜ。
いつか・・・また生まれ変わったら・・・






今度こそお前をぜったいに幸せにしてみせるから。




だから、もういちどだけオレと出会ってくれ。
























































あとがき


それにしても死ネタすきだな><



BUMP「ベル」イメージなんです、あくまで。

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