死ノ館


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   [1つ目の鏡]
   [こんな選択肢、ズルイと思う]




「・・・この鏡は・・・」

「でかい鏡だなー。あ、源田よりも大きい」

 目の前にある鏡。

 いや、あった鏡。


 4人が消えたことで頭がいっぱいだった俺たちは今さっきまで短い廊下の突き当たりの大きな鏡に気がつかなかった。

「この廊下、必要なのかな」

「ん?どういう意味で?」

「んー。なんか、さ・・・不自然じゃない?
 あんな長い廊下があったんだよ」

「どうだな、アレは長かった」

「ね、源田君も思うでしょ?
 それを考えると、ちょっとこの廊下は不自然だなっておもったんだ」

「うん、俺も不自然って思った。
 何もなかった廊下にぽつんと鏡だけがあるんだぞ?」

 不自然極まりない鏡。
 とても、怖い。

 鏡ごときになぜこんな感情を抱くのだろう?
 自分で分からない。

 けど俺、基山ヒロトはこの鏡から何かを感じる。

「怖い、だろ。ヒロトは顔に出やすい」

「・・・うん。流石緑川だよ」

 横にいた緑川に俺が怖がっていることを悟られてしまった。

 ・・・もっとしっかりしないと。



「あ、ここ。読んでみて」

「どうした?」



 不意だった。

「これ、豪炎寺と吹雪?」

 豪炎寺君と吹雪君の声がした。

 ・・・なんだ、これ。


 鏡に映っている2人が喋っている。


「これ、本当に豪炎寺と吹雪?」

「・・・たぶん。アイツの仕業じゃないのか?
 館の中をぐちゃぐっちゃにできるんだから、相手を鏡に映し出すことくらいできるだろうな」

 佐久間君の冷静な考えが俺も正しいと思う。

「でも、何故鏡に映し出す・・・?」

 源田君の疑問・・・俺の疑問でもある・・・が廊下に響き渡り、再び静まり返る。

 分からない。
 アイツの考えてることが分からないんだ。



【豪炎寺修也と吹雪士郎だよ】

「あれ、これ・・・」

 黒い壁に白色で文字が生まれてくる。 
 不気味だ。

 直感で分かった。

「アイツ、だね」

「うん、俺もそう思う」

 素直に、文字が生まれる、浮かびあがってくるのを待つ。


【4人に会いたい?
 少なくともあっちの4人はそう思うはずだよ。
 はぐれたことを知った瞬間にね】


「確信犯だ・・・」


【会う方法、1つだけあげる。
 1人、その鏡に閉じ込めるだけだよ。
 そうしたら、4人に会わせてあげる】

「・・・なっ!」

 目の前が真っ暗になったかと思った。


 1人、この鏡に閉じ込める・・・?

 8人全員が集まれないじゃないか。


 ・・・。


「ふざけたことを・・・!」

「あぁ。しかも、なんだよ鏡に閉じ込めるって!!」

「うん、そうだね」

「もうこんな鏡、ほっとこう!
 鏡に閉じ込めるなんて意味が分からない」

「・・・うん」

 
 いけない事だって分かってる。
 皆と意見がかみ合っていない、って分かってる。



 ごめん。俺、鏡の中に入ろう。



 もともと、俺のせいだ。ばらばらになったのは。

 あ、後ろ向きな理由ばかりだ。 
 じゃあ、前向きに理由をいってみるよ。



「俺、皆が助けてくれるって信じてるよ。
 俺自身も全力を尽くす」



「・・・ヒロト?何言ってるの?」


「だから、俺、鏡の中に入る」


「「何を言ってる?!」」

 源田君と佐久間君が同時に目を見開く。

 残念。


 そのとき、俺はもう鏡に触れていました。




 無。
 それが正しい、鏡の中。
 音が聞こえない。でも、厚いガラスのようなものの向こう側にいる3人だけが分かる。

 俺は3人が分かるように精一杯出せる大きな声で叫ぶ。




「信じてるから!」




 そのあと、少しだけ聞こえた緑川の叫び声。


「ヒロトォオ!!」


 俺を呼んでる。
 ごめん、勝手にいってごめん。

 でも、俺もこっちでがんばるから。




 もう1回。
 全員で脱出しようね。









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