死ノ館


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   [はぐれる]
   [おかしいな。はぐれる筈ないのに]



『うーん、読めば読むほど、自分がおかしくなりそう』

「そうだね。僕、なんか泣いちゃいそう」

 しばらく、私たち4人は日記帳を読んでいた。

 けど、先ほど皆で読んでいた内容以上の情報は手に入らず。



「そろそろあっち行こうか。
 皆待ってるぞ」

『確かに。
 ちょっと待って。これ、直してくる』

 確か、この日記帳は奥のほうの棚にあったなぁ。
 ぱたぱた、と小走りで日記帳をもとあった場所に返す。

 思えば、この部屋、綺麗に片付いてる。
 最初入った時は何百年も片付けいていない、そんな感じがしたけど。
 埃1つ無い。
 本特有の匂いもない。


「奈音、急げよ」

『分かってるって』

 律儀に皆は私をまっていてくれたよう。
 ドアを開けてすらいない。

「皆から遅いってブーイング受けるかな?」

「緑川なら言うかもしれないな」

「いやいや、佐久間だろ」

『意外とヒロトがするかも?』

「奈音、それはさすがに無いだろ」

「だって、基山君紳士だもんね」

『違う違う。クレオパトラ』


 またもや、ヒロトのクレオパトラで冗談を言ってみたら、豪炎寺が噴出した。 

 
 風丸がドアノブに手をかけて、ドアを開ける。

 ドアの向こうの部屋は・・・まぶしい。
 

「―あれ?」

 風丸の声がした。

『ん、どしたの』

 私が風丸の脇から顔をだす。




『―いない?』







 4人がいなかった。








『・・・うそ?』

「何でいないの?」

 ぺたり、足の力が抜けてその場に座り込んでしまう。

 
 皆がいないはず無い。

 
「佐久間が、奥の部屋で待っているって言っていた。だからさ、ココで待っているはずなのに」

「あの4人が約束を破るはずがない」

「じゃ、皆どこにいっちゃったの?」

『・・・分かんない』


 目の前が真っ暗になっていくのを感じた。

 ここで、ハグレテシマッタ?

 
 3人とも、頭を抱える。

 この状況から抜け出す方法を考えている。


「・・・待て。俺の考えを聞いてくれないか」

「豪炎寺君、何かいい考えでたの?」

 豪炎寺だった。
 何かをひらめいたのは、豪炎寺だった。


「ヒロトと佐久間が言っていたこと、覚えてるか?」

『え、と。この部屋から出よう、とか、早く来いよ、とか』

「違う。2人は埃っぽい、カビ臭い、と言っていた」

 ・・・確かに、言っていた。

「だが、俺はそう思わなかった」

『私も。逆に、綺麗って思った』

「どういうことかな。
 ・・・もしかして、あの人の仕業?!」

 ハッ。と4人が眼を見開く。


「・・・相手をはぐれさせる、か。
 そのほうがいいよね。だって、万が一脱出したって、4人はまだ館に残っているもん」

『そうか。
 そのほうが人数も少ないわけだから、知恵も少なくなるし、心細いもんね』

「それに、自分たちが出口を見つけたら、お前たちはどうするか?
 俺だったら、出口を通らずにヒロトたちを探す。
 そういう、仲間だからこその考えを悪用したんだ、アイツは」

 悔しそうに豪炎寺が唇を噛む。

 でも、1番悔しいのは風丸のはずだ。


「ごめん。ごめん。ごめん!
 俺があんなことを言わずにヒロトについて行っていたらよかったんだ!
 なのに、なのに、俺は奈音を、皆を引き止めて・・・!!」

 涙を流し始める風丸を私はそっと抱きしめる。

『泣き虫だよ、ベソ丸。
 私たちがいつ、風丸を責めた?』

「そうだよ、風丸君悪くないよ」

『よしよし。男でしょう?なら泣きやみな。
 そしたら皆を探しに行こう』

「・・・でも、でも!
 はぐれてしまったんだっ」

 
 嗚咽交じりの風丸の叫びに対して豪炎寺が鼻で笑う。

「・・・あいにく、まだ4人一緒なんだ」

「豪炎寺・・・でも」

「豪炎寺君の言うとおり!
 そろそろおかしいのを向こうも気がついているはずだよ」

 吹雪が風丸の言葉を無理やりさえぎり、太陽のように笑う。



「・・・ありがとう、奈音、吹雪、豪炎寺。
 もう大丈夫。行こう」



 朱色の眼は弱弱しかったけど、風丸は笑った。


 おい、この館の主とか言うやつ。
 いくら私たちに何をしたって、決して私たちは屈しない。
 お互いを信じあい、頼り合う。

 だから、次お前とあったときは8人そろって笑ってやる!








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