夢の稲妻

□こんな奇跡
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『あれ、カゲト君』

 
 放課後。
 
 帰っている途中にお茶をクラスに忘れていたのを思い出したので、1人で取りに帰っていた。

「あ、野々井さん」

『どうしたの?今日日直だっけ?』

「いや、違うけど・・・帰るとこ」

『へへ、そうなのー。私、お茶を忘れてて。腐ったら嫌だし』

「そうだね」

 ・・・き・・・気まずい・・・・!

 しかし。
 ここで、しっかりアピールするべきじゃないのか?
 
 だって、好きな人と2人きりなんて・・・めったにないよね?

「どうしたの?お茶、とらないの?」

『あ、そうだね。えと・・・どこにおいたっけおわっ!』

 とてもアガリ症の私。
 カゲト君の前なのに、何もないのに、へんな声を上げて盛大にこけてしまった。

 びっくりしているカゲト君の顔が見えた。
 その瞬間、恥ずかしくなって声が裏返る。

『えええぇえ!何で私、こけたのかしらっ』

 赤い顔を見られないように、勢いよく立ち上がる。
 しかし、ひざに妙に力を入れてしまったため、もう1度床にペタン、と座り込む。

「大丈夫?」

『ふぇ?』

 素っ頓狂な声を出して上を見ると、カゲト君が私に手を差し出してくれているではないか。

「ほら、つかまりなよ」

『・・・ん、ありがと』

 カゲト君の手は、冷たかった。
 けど、ほんのり、暖かかった。



「あのな、その・・・」

『ん、どうしたの』

 いきなりカゲト君がカゲト君自身のかばんの中をごそごそし始める。

 かばんから出てくるもの・・・それは。

『あれ、それ・・・私の?』

 私の水筒だった。

『何で持ってんの?』

「うん、これを取っとけば・・・来てくれると思って」

『ん?それって、どういう意味かな』

「きてほしかった。野々井さんに」

 心なしか、カゲト君の顔が・・・赤い?


「あのさ、そのね?」

『あ・・・はい。聞きます』

 変な空気だ。
 妙に肩に力が入って・・・心ここにあらず?ってカンジ。
 
 あぁ、カゲト君って、きれいな目だなぁ。
 この銀髪・・・寝癖なのかな?
 入学してきた時よりも身長のびたなぁ。
 私よりも背が高い。

 ・・・て、なにを考えてるんだ私っ!



「好きなんだ。野々井捺架、貴方のことが」




 変なことを考えてるから、へんな空耳まで聞こえてしまった。



「付き合ってください」



 本当、自分最近重症なのかもしれない。
 妄想も大概にします。


 



『・・・え?はいぃいい!?』




 奇跡か。
 これは奇跡か。

 しかし・・・こんな奇跡があっていいのだろうか?


「返事・・・ほしい」

『はぇ。返事?』

 頭がぐるぐるしてる。


「・・・あ、いきなりごめん。告白とかしちゃって・・・迷惑?」

『え、そんな。迷惑・・・じゃないよ?』

 クラスから出て行こうとするカゲト君を止めて、顔を真っ赤にしながら、返事する。

「・・・それって?」



『だからね?わ、私もカゲト君のこと・・・好きだよっ!?』





 「ありがとう」といいながら私を抱きしめるカゲト君は本当にうれしそうだった。













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