GO!

□「I love you. You love me!」
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「人を愛するということ。人に愛されるということ。それは、とても人間にとって原始的なことで、それと同時に、とても大変で難しいことだと、自分は思っています。自分は、家族が好きです。友達が好きです。後輩が好きです。だけど、それは決してloveではありません。それは、人を好きになるということです。冒頭で述べたように、自分は人を愛する、愛されることは難しいことだと思っています。だから、好き、という感情は悪くいえば当たり前で、誰でもできると、自分は考えています。
 自分は、自分自身を本気で愛してくれる人に出会ったことがありませんでした。それと同時に、本気で人を愛したことがありませんでした。よく告白をうけますが、全てを全て断ってきました。その中には泣いて走り割っていく人もいました。けれど、自分は少しも心を痛めたり、後悔をしたりはしませんでした。別に、自分は相手のことを愛していないし、相手を愛する義務、相手を受け入れる義務なんて自分にはないし、なによりも自分は、こんな餓鬼なのに心の奥底から1人の女を愛せるはずが無い、と思っていたからです」

 校内弁論大会。
各クラスの代表者1名が順番に弁論を読んでいくという行事。自分的に、卒業式の次にめんどくさい行事だ。
 只今弁論を読んでいるのは内容から分かるように隣のクラスの南沢だ。
 眠たい。寝たい。けれど、三国が

「おい野々井、南沢のくらいは聞いてやれ」

というのだからしょうがない。三国のために寝ることができない。

「そのとき、幼馴染は自分にこういいました。「私は、人を愛してるよ。餓鬼なりに、餓鬼らしくね」自分はびっくりしました。いつもはぼぅっとしてて、何を考えているか分からないような馬鹿なのに、大人の意見を持っていたからです。そして幼馴染は「素直になりなよ。意外と近くに愛してくれている人がいるかもしれないよ」といい、どこかへ歩き去りました」

 どきり、とした。
幼馴染、とは自分のことだ。
 いや、そんなことはどうでもいい。
やばいのは台詞だ台詞。
そのときは、茜ちゃんに「捺架先輩は少女マンガをもっと読むべきです」とか言われて借りさせられた漫画の影響でちょっとそっち系のにおいを醸しだす言葉を言ってしまった。
 車田がびっくりした顔でこっちを見てくる。隣の三国は時間が止まったかのようにこっちを凝視してくる。

「そして俺は気がつきました。俺はこいつを愛しているんだと。こいつは、俺を愛してくれているのだと。
 だから今、自分はここで告白します」

 南沢がスタンドからマイクを取り外し、ステージから降りて私たちが座っているほうへ。
やっと我に返った三国がこう言う。

「南沢がこっちにきたら、抱きついてキスをするんだぞ」

「するわけないよっ」

 その間にも南沢は自分に近づいてくる。
 何で先生は制止をしないのかよっ。先生をみるとにこやかにわらっていた。生徒会は?とおもい生徒会の人たちを見たら赤面していた。
先生にも生徒会にも承認を得ているんですか。無駄に頭のまわる人だ。

「捺架、」

 マイクを通した南沢の声がする。振り返りたくない。前を見たくない。


「愛してる」


 僕は南沢の顔を一発殴り、マイクをぶんどり、2文字の言葉を叫んだ。


 * *

好き、馬鹿、あほ。など、ご自由に。

 * *

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