星空に祈りを

□素直になれなくて
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私は少し苛立った。
准将は私に見向きもしない。
今日は特に悔しかった。

慣れないタイトスカートに、
ピンヒールを履いてナバート中佐オススメのリップも塗った。

私を見て欲しい。
ただそれだけで良かった。

「何をそんなに怒っている」

ああ、さっきまで
私に無関心だったくせに、
そんなふうに優しくされたら期待してしまうではないか。

「何でもないです」

素直になれない私は
意地をはってそう言う。
私を見てほしいって、そう言えたらいいのに。
たった一言が言えなかった。

「何でもなさそうな顔をしていないが」

彼は私の顔をじっと見て言う。
思わず顔を反らしてしまった。
見てほしいとは思ったが
いざ見つめられると緊張してしまう。
そんな曖昧に動く自分が嫌だった。目の前にあるコーヒーを一気に飲み干す。
だが、それはまるで私の心のように苦くて…、

「苦い…です」

ポツリとそう呟いた私に彼は眉をひそめる。

「それは私のコーヒーだ」

一瞬の沈黙が執務室を支配する

「ええっ!?」

思わず噴き出しそうになった口を慌ててふさぐ。
隣でフッと鼻で笑う彼の声が聞こえた。

「君にはこちらが似合うな」

そう言って彼が取り出したのはパルムポルム産の特製フルーツジュースの瓶。

「こ、これ!!どこでっ!?いつ手に入れたんです!?」

思わぬ彼のサプライズに私は声が上擦った。
パルムポルム産のフルーツジュースといえば知らぬ者はいないぐらい有名な代物だ。
豊潤でみずみずしい果物の味わい深さに口にした者は我を忘れてしまうほどだという。
フッと彼の笑う声がして振り向けばいたずらな笑みを浮かべて私を見つめていた。
子供扱いされているようで私はそっぽを向いて少しむくれてみる。

「君は君のままが一番素敵だ」

不意に彼が口を開いた。
少し驚いて顔を向けると唇に微かな柔らかい感触を感じた。

「え…?」

慌てて口を手で覆えば彼は一層笑った。触れた唇から先程の彼の熱が伝わり余計に私は恥ずかしくなった。

「じゅ、准将なんて嫌いですッ!」

私がそう言っても彼は顔色一つ変えない。相変わらずな表情で私を見つめる。

「着飾らなくていい、普段の君が一番素敵だ」

どうしてそんな事を言うのかと私は問おうとしたがそれは叶わなかった。

再び唇を塞がれてしまったからだ。
彼から伝わる熱に翻弄される。

だが、それも悪くないと思い始めている自分を恨めしくも思うのだった。


触れた
ささやかな愛を乗せて






(准将…背高すぎます)
(何か困ることでも?)
(キスをしていると首が痛くなるんです)
(…………)



-fin-
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