ある男の仔の事情
□ある男の仔の事情
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今まで僕は 自分のことを 男だと思っていた。
母は僕のことを葵くん≠ニくん付けで呼んでいたし、着ている服も全部男物ばかりだった。
それなのに。
「・・・言いにくいけれど。あなたは女の子だから男子校には行けないわ。」
中学の担任の佐伯先生は、僕に衝撃の一言を放った。
中学生活は、男として生活することに不便は無かった。制服は無くて私服登校だったし、プールの授業も無かったし。保健の授業は男女一緒だった。
皆は僕のことを男としてみてくれたし、バレンタインにチョコレートだってたくさん貰った。
・・・最近体に変化が起きていることには、あえて気付かないふりをしていた。
胸のふくらみだとか、腰の丸みだとか。
必死に見えないようにしていた。
僕は家に帰ってすぐ、母に聞いた。
「母さん!なんで僕が女だって、言ってくれなかったの?!僕ずっと・・・!」
「あんたが男に生まれなかったのが悪いのよ!私はずっと男の子が欲しかった!」
「っ!」
そんなこと言われてもっ・・・
僕だって、男の子に生まれたかったよ・・・
その日は一晩中、一人で声を殺して泣いた。