君はMorpho
□君はMorpho.\
3ページ/57ページ
「リオ、先ほどの言葉は例えおまえでも許せん。」
「―――忘れてしまったんですか?」
うつむいたリオが呟くように言った。
忘れる?
何を?
リオの言っている意味がわからなくて、俺は怪訝とした表情でリオを見る。
やがてリオはゆっくりと顔を上げた。
「テニスにおいて、勝敗に勝るものは…気持ちです。」
リオはこちらを真っ直ぐ見つめながら、泣いていた。
「今、どんな気持ちでテニスをしているんですか?」
泣いて震えつつあるリオの声は、俺にははっきりと聞こえた。
***
会場の都合上、全国大会決勝戦は3日後に延びた。
正式に退部届を書いたリオは、それを部室の幸村のロッカーに入れた。
『全国大会では必ず優勝しなくてはならない』
『勝つことに意味があるんだ』
昨日の幸村の言葉が、頭の中で谺する。
アメリカへ発つ前、幸村と交わした会話を思い出せば自然と涙が零れる。
あの優しい目をしていた幸村が、とても冷たい目をしてコートを見ていた。
その理由はおそらく…。
.