君はMorpho

□君はMorpho.W
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リオは、それがとてつもなく怖かった。



「柳…先輩…っ」



優しくて面倒見のよい彼が豹変したときの、欲に塗れたあの表情。


思い出すと、体が震えた。





「中岡…?」



ふと近くで声がし、慌てて顔を上げる。


そこには氷帝の宍戸が立っていた。



「おまえ…どうしたんだよっ?」

「えと、…宍戸さん? 何でもないです…」



びしょびしょのジャージで涙を拭う。


雨で濡れていてよかったと思った。



「何でもねぇワケねぇだろ! こんなに濡れて…」

「倉庫を探していたら、迷ってしまって…そしたら雨が…」

「リオちゃん!?」



宍戸の後ろから鳳が現れた。

すると、宍戸がリオの腕を引っ張り立ち上がらせる。



「長太郎。跡部呼んで来い」

「えっ? は、はいっ」



おどおどする鳳は慌てて来た道を引き返していった。



「とりあえず、シャワーだな。氷帝の部屋に付いてっから、行くぞ」

「でっ…でも」

「いいから行くぞ」



ぐいぐい引っ張られ、階段を上がる。


時折くしゃみをするリオを気遣いながら、宍戸は部屋へ向かう。



(何で…泣いてんだよ)



雨で濡れ滴る水の他に、頬を流れているのは明らかに涙だ。







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