時渡の鬼姫

□銀翼の狩人
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第1話 世界の一部



世界には、未知なるものはたくさんある。


海を越えれば自分の知らない世界が広がっているのは当然のことながら、その事実に底は存在しないのだ。

言うなれば海の先のすべてを、この人類が知っているわけではないということ。







「やっぱまだ朝はさみぃな…」

「おう…とっとと終わらせてベッドに入りたいぜ…」



とある小さな島の、明け方のことだった。


深い霧の巻く海岸の波打ち際。

仕事の為見回っていた男2人が、海風の寒さから互いに肩を震わせながら歩いていた。

普段となんら変わりない、ほの暗い海を眠気で掠れる眼でぼうっと眺めていた男の目に大きな塊が映った。



「なぁ、あれなんだ…?」

「…まさか人か?」



奇妙なものがその砂浜に打ち上げられているのを発見した。

一見横たわる人のように見えるそれ。

2人は表情を険しくし、それに駆け寄ってみると。



「う、わぁぁああ!!」

「なっなんだ、これ!!」



確かに、それは人の姿をしていたのだが。


その指、手足、身体に顔。

どれをとっても、常人のそれではなく桁違いに大きなものだった。


そしてその大きな顔に見合った大きな目は、男2人を食い殺さんばかりに睨みつけていた。






   ***






『おいで、おいで―――』



誰かに呼ばれた気がして、少女は静かに振り返った。

しかし見えるのは近代的な街並みにたくさんの観光客ばかりで、誰も自分を呼び止めていないことが窺えた。


少女は重いため息を一つ吐くと、再び足を進める。

それからはただ黙々と歩き続け、やがて目の前に聳え建つ豪勢なビルの正面玄関で足を止めた。






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