Liar garden

□Honey・Honey!
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あれは失恋だったのだろうか。今考えても答えは見つからないままだ。
思い出すのは大きな寂寥感と小さな胸の痛み。あの痛みが指す意味はいったいなんだったんだろう?

「――日和ちゃん?」

遠慮がちに聞こえた声が私を思考の渦から引き戻す。一瞬、自分がどこに居るのか分からなくなった。
顔を上げれば不思議そうな高橋くんの顔。あぁ、そうだ。飲み会に来てるんだった。

「えっと……」
「もう酔っちゃった? もしかしてお酒に弱いとか?」

言いながら高橋くんが私の向かい側の席に座る。私は曖昧な笑みを浮かべた。
今日は大学のサークルの定期集会――という名の飲み会だ。まだ始まって1時間ほどしか経っていないのに、すでに周りは出来上がっている。

「珍しいな。前回は参加してなかったよね?」
「まぁ…暇だったから…」

嘘。本当は帰ろうとしていたところを江梨子に拉致されたのだ。引きずられるまま飲み会に連れてこられて、こうして隅っこでお酒を飲んでいる。
高橋くんはなぜか楽しそうに笑っていて、席を離れようとしなかった。私は気まずさにお酒を一口飲む。なんで私の前に座ったんだろう。

「日和ちゃんは夏合宿行くの?」
「夏合宿?」
「聞いてない? 今年は那須高原でキャンプだって」

そういえばそんな話を江梨子がしていたかもしれない。夏合宿か。考えてなかったな。
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