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□左手に愛を、右手に君を。
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私はずっといっちゃんのことが好きだった。いっちゃんが年下の私なんかを相手にしてないのは分かってたけど。それでも歳を重ねるごとにいっちゃんとの距離が埋まっていくような気がしてた。
新任の教師として挨拶をしているいっちゃんは本当にかっこよくて。そして、そう思ってるのが私だけじゃないことを知った。

『佐伯先生ちょーかっこよくない?』

聞こえてしまった魔の言葉。周りを見渡せば、女子生徒はみんないっちゃんの方を見ている気がした。
いっちゃん、学校中の女子生徒がいっちゃんを狙ってるって言っても過言じゃないんだよ? それなのに他人のフリなんかできないよ。その他大勢になんてなりたくない。

『……彩音、』
『やだ!』

聞き分けの悪い子供みたいな私に、いっちゃんはため息をつく。だって。少しだけでもいっちゃんの特別に居たいんだもん。

『彩音は俺を困らせたいの?』
『ちがっ……!』

困らせたいんじゃない。でも私にだって譲れない一線ってものがある。不機嫌そうに顔を歪めるいっちゃんを見て、私はなんだか焦ってしまって。

『――いっちゃんのことが好きなの!』

気がついたら告白していた。慌てて口を押さえるけど、言った言葉は元には戻らない。嫌な沈黙が部屋の中に満ちた。
私を見下ろしたまま何も言ってくれないいっちゃんに、いっそのこと気を失いたくなる。いっちゃんはうつむく私に近づいて『っ、』左手で優しく頭を撫でた。

『とにかく、明日からは佐伯先生って呼べよ』

それだけ言っていっちゃんは部屋から出ていった。
それが私の、最初の失恋。
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