Novels

□左手に愛を、右手に君を。
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幼馴染みのいっちゃんが新任の先生として私の学校に赴任してきたのは、今年の4月のことだった。だけどそれがきっかけで、私といっちゃんの距離は一瞬にして遠くなってしまった。

『あや、今から言うことよく聞いて』

いっちゃんが新任教師として私の学校に赴任してきた時、正直めちゃくちゃ嬉しかった。だって学校でも一緒に居られるって思ったんだもん。
だけどいっちゃんは渋い顔をしながら、浮かれる私を一瞬にして奈落の底に突き落とした。

『明日から学校では他人のフリをして』
『………え?』

何を言われたのか分からなくてバカみたいにいっちゃんを見ていたら、もう一度『俺と赤の他人のフリをしろ』と言われた。

『なんで!?』
『まずいだろ。教師と生徒が必要以上に仲が良いのは。俺、新任だし』

ショックだった。他人のフリをしろと言われたこともショックだったけど、いっちゃんは簡単に私と他人のフリができるんだって思えて。
そんなにあっさりと終わっちゃうほど浅い関係じゃないって思ってたのに。もしかしてそう思ってたのは私だけ?

『っ、やだ!』

気がついたら口が勝手にそう言っていた。言った瞬間に、いっちゃんの顔が不機嫌そうに歪む。
いっちゃんを困らせたいわけじゃない。だけど言った言葉は引っ込められない。それに本心だし。
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