短いの
□青春ランアウェイ
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その男、相模大輔の印象はとにかく最悪で、チャライ、軽い、頭悪そう。
何考えてるんだかわからない飄々とした態度とか、常に天を向いているセットされた髪とか。よく見かけるゲラゲラとした笑い方は、一緒にあいつのスッカラカンの頭の音まで聞こえてくる気までした。
とにかく嫌い…というか、気に入らないところが多すぎた。
和解は一生無理だと思っていた。和解どころか、こっちには歩み寄る気さえなかったのだ。このまま一生関わらずに生きていく。そう思っていたのに。
放課後。俺は、いつまで経っても姿を見せない委員会の相方を、わざわざ教室まで迎えに行くはめになった。
俺としてはむしろいない方がありがたかったのだが、向島先生が言うのだから、しかたない。
「今日、俺とあんた、保健委員の当番なはずなんだけど」
「ああ。オレ、バイトあるから」
目を合わせようともせず、俺の脇を通り過ぎようとするチャラ男。
こめかみに青筋が浮かぶのが自分でもわかった。
「そう言って、今週ずっと俺にやらせる気かよ」
「しかたねえだろ。家庭の事情ってやつだ」
ほー、家庭の事情。
なら、いますぐそのジャラジャラしたアクセサリーを売っぱらって、食費にでもかえてこいや。
こいつとの会話はイライラする。
組んだ腕に爪を立てることでなんとかやり過ごした。
「なあ、どいてくんね? 出れないんですけど。邪魔」
教室の入り口で扉にもたれかかりながら話していた俺たちは確かに邪魔で、先程から出ようとしている他の生徒が諦めて後ろのドアから出て行くのを何人か見た。
そんなことわかっている。わかっているのだ。
でも、ここをどいたら、お前が逃げるだろうが!
相変わらず、背を丸めて下を向きながら面倒くさそうにしている相模大輔からは、「早く帰りてー」オーラがムンムンと出ていた。
ああ、ムカつくことこの上ない。
俺がそう思うと同時に、目の前のムカつく男は長い長いため息をついた。
ため息をつきたいのはこっちだ!
これ以上何を言っても駄目な気がして、不本意ながら俺は道を開けてやった。
「じゃ、バイビー」
案の定、一目散に逃げていく男の背中に、俺は怒りと軽蔑の一瞥を送ってやった。