「見てエース!!でっかい桜!!」
二人で立ち寄った春島。
その島の象徴であるらしい大きな木は、たくさんの淡ピンクの花を揺らして俺たちを出迎えた。
「へェ・・・立派なモンだな。」
まるで天井のように枝を広げるその木を見上げて、思わずため息が出る。
「よし、あの木の根元まで行って花見酒といくか!」
そう言って先程買った酒瓶を鞄からちらつかせるエース。
私もその提案に乗って、自分用にお猪口を購入してから島の中心へと向かった。
「近くで見るとでけェな・・・」
島の中心部は、一番大きな桜の木を囲むようにたくさんの桜が花を咲かせている。
木の根元に背を預けるようにして腰かけると、目の前はピンク一色だった。
「ほれ、ついでやるよ。」
彼女に向けて瓶の口を差し出して、持ち上げられた猪口に透明の水を注ぐ。
「ありがとう」という彼女の言葉を聞いてから、俺たちは互いの酒をぶつけて小さな音を立てた。
言葉を交わすでもなく、ただ一面のピンクを眺めながら時々口を潤す。
こんな時間が幸せだと感じるようになった。
やみくもに夢を追い求めていた俺。
何が欲しいのかもわからず先ばかり急いでいたあの頃。
その時はこんな穏やかな幸せが訪れるなんて思ってなかった。
きっとこれは、俺を受け入れてくれた親父や仲間
そしてお前のおかげ。
お前のこと愛さなかったら
お前に愛されなかったら
きっとこんな気持ちにはなれなかった。
あらためて、彼女の見慣れたけれどときめかされる顔を覗き込む。
すると、ひときわ強い春の嵐が俺たちを煽った。
風に身を任せて枝に別れを告げた花びらたちが、一斉に宙を舞う。
「わぁ・・・」
そんな文字通りの花吹雪に囲まれて、いとおしむように微笑む君の横顔を
俺は一生忘れないと思った
----かけがえのない君へ
君もどうか、忘れないで
俺と居た日を