■過去拍手■

□バレンタイン
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古びた木の床に

赤いリボンのついた四角い箱が転がった。


出所は

彼愛用の黒マント。


そして本日


バレンタインデー。




ほんの数秒でわたしの脳内に嫌な想像が駆け巡る。

さっき島から帰ってきたこの衣服の持ち主――シャンクスは、そういえば少し嬉しそうに部屋に入ってきてそのままお風呂へ直行していた。


まさか


ここ数日の島への滞在で・・・浮気?



青ざめたまま固まっていた私は、シャンクスがお風呂の戸を開ける音で我に返った。

あたふたしながら箱とマントをクローゼットに押し込む。


「どうかしたか?んなとこ突っ立って。」

頭をガシガシ拭いているシャンクスに後ろから声をかけられて、「なんでもない!」と取り繕った。

変にドキドキする胸を押さえながら、私は棚から自分が用意していた箱を取り出す。


「あの、シャンクス・・・これバレンタインの・・・」

他に相手がいるのならもう必要ないのかな、と不安になりながらも、逆に確かめたい気持ちもあって
そのリボンつきの箱を彼の前に差し出した。


「・・・」

箱を受け取ってくれたはいいけど黙ったままリアクションの無いシャンクスを、恐る恐る覗き込む。

「・・・シャンクス?」

その顔は、耳まで赤くなって硬直していた。


「お、おぅ!!ありがとな!!」

「・・・」

この反応は、喜んでくれてるんだろうか?
リボンをほどこうとはせず、ただ目をキラキラさせながら箱を眺めるシャンクス。

それを見て、私はあることを思いついた。


「ね、ちょっと貸して?」

彼の持っていた箱を奪い取り、リボンをとく。
「あー!!」と残念そうに悲鳴をあげるお頭にはお構いなしに、箱を持ったままシャンクスの膝の上にちょこんと座った。

「はい、あーん♪」

「ンな!?」

一粒取り出して口元へもっていくと、彼はゆでだこみたいに顔を真っ赤にした。

たまには照れてるトコ見てみたかったんだよね。

ふふっと笑いながらチョコレートをシャンクスの口に落とせば

「ん、うまい」といまだ薄赤い顔のまま言ってくれた。


「よかった・・・っきゃ!」

いきなり頭を抱き寄せられて、私の唇とシャンクスのそれが触れる。

深く舌を入れられて、甘いチョコが口の中に広がった。


「お前が俺の上になるなんて100年早ェ。」

「え?」

見るとさっきまで真っ赤だったシャンクスは居なくて、年上のオトコらしい顔に戻ってて

抱き上げられてベッドへ落ちれば、やっぱり私は鳴かされるだけだった。



「そうだ、コレお前にやろうと思って買っといたんだ。」

シャンクスが取り出したのは、さっきの赤いリボンの箱。

「・・・私に?」

開けてみれば、ピンクゴールドに小さなダイヤのあしらわれたリングが入っていた。


----チョコより甘い浅はかな私

やっぱりあなたには勝てない。



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