復活novel

うさみみ Side・A
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並盛中学校の保健室では、ガスマスクを装着した二人の男による、危なげな会話が交わされていた。


「手筈は整ったか?」


「ああ、ブツはこのアタッシュケースの中だ。扱いには充分注意してくれ。」


くぐもって聞こえるが、その声の持ち主は明らかに鬼畜な家庭教師様、リボーンと、校医のシャマルのものであった。


シャマルは細心の注意を払って、アタッシュケースをリボーンに手渡す。

明らかにリボーンの身体より二回りは大きいとされるアタッシュケースを彼は軽々と持ち上げ、早々に保健室から去っていった。


アタッシュケースが部屋からなくなると分かると、シャマルは爆発物処理班が一仕事終えたかのように緊張を解き、机に突っ伏した。


「はぁ…………」


大きくため息をつくと、ガスマスクのレンズが曇って欝陶しい。

チッと舌打ちしてマスクに手を掛けたところで思い止まった。


まだ“アレ”がこの部屋に残っているかもしれない…
今ここで空気を吸うのは危険だ…。



振り返って保健室を漠然と眺める。

平日の昼間だというのに、カーテンは隙間なくぴったりと閉められ、入口のドアには鍵がかけられている。
おまけに表側には「外出中」のプレートまで引っ提げられていて、完全に外界とは遮断されていた。


視線をずらしていくと、手などを清める簡易な洗面台の鏡に移った自分の姿に飛び上がりそうになった。

薄暗い保健室に、白衣を羽織ったガスマスク男とは何とも不気味で、珍妙な光景だ。


「……ったく…」


悪態つくが、こんな事になったそもそもの原因は自分にあるので怒りの矛先は、ぐるりと一周して自分に向けられた。


再び舌打ちしてから、内ポケットに忍ばせていたタバコの箱を掴み取り、手慣れた手つきで上下に揺すり、器用に一本だけを浮かせた。


だが、ここでやっと愚行である事に気付き、怒気を鎮めながらそっとタバコを内ポケットに戻した。


「……………寝よ。」


怒れる感情も息苦しさも、寝てしまえば関係ないという理屈で、シャマルはしばらく作業用デスクで眠ることにした。
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