復活novel
□花嫁のキス Side・A
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放課後の応接室では、いつもの事ながらグラウンドを背に、雲雀が書類に目を通したりと雑務に追われていた。
その手前では立派な応接セットのソファーに、可愛い恋人が夕日の暖かな光を浴びながら鎮座している。
視界には入っているが、黙っているので居るのか居ないのか、時々分からなくなる。
仕事の邪魔をしまいとする綱吉なりの配慮かと思われるが、窓から聞こえてくる運動部の掛け声や雑踏よりも、恋人のコロコロと鈴の鳴のような可愛らしい声を聞いていたいのだが…。
恋人は一日の疲れを癒すように微睡んだ表情でソファーに深々と腰掛けて、今にも眠ってしまいそうである。
まだ当分終わりそうにない書類の山を見て溜め息をついた。
後一時間は優に掛かるだろう。
適当に目を通してさっさと終わらせるか、今日はここで一旦切り上げるか迷っていると、綱吉がぐらぐらと船を漕ぎだした。
かくんと頭が下がって、ふらりと元の位置に戻る。
いくらかそれを繰り返しているうちに、本当に眠ってしまいそうだ。
「綱吉。今日はもう帰るよ。」
頭では決めかねていた事であったが、口からはすらりと答えが出た。
「へっ?あ、はい!」
夢うつつを漂っていた意識が急に呼び寄せられたように、反射的に綱吉はソファーから立ち上がった。
雲雀と目を合わせるなり、困った風に「えっと…今何て……?」と恥ずかしそうに瞳を潤ませた。
そんな様子ですらいとおしく感じられ、思わず腰を抱いて口付けてしまう。
「んっ……雲雀さん…」
「今日はもう帰るよ。」
キスの余韻に浸っている恋人に、再度同じ事を言ってやった。
「もう帰っていいんですか!?」
綱吉の表情がぱっと明るくなる。
嬉々として何かを確認するようにグラウンドに目をやったかと思うと、今度は焦りだした。
「雲雀さん!終わっちゃいます!来て下さい!」
グラウンドに何があったのだろうか。
綱吉は雲雀の手を取り走りだした。