復活novel

二人旅
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時折車が近くの路地を通過するエンジン音が聞こえる。

その路地も昼間の雑踏が嘘のように消えて、人の気配がしない。

そんな満月の夜だった。


どこにでもある一人暮らし用の賃貸マンションの寝室では、ベッドが一定のリズムで軋む音と、妖しげな会話が交わされていた。


「あっ……痛いっ…!」


ベッドにうつ伏せになって、青年が悲痛な声を漏らす。


「力を抜いて下さい。もう少しで終わりますから…」


スタンドの光で壁面に映し出された影は、もう一人の男がうつ伏せの青年に覆いかぶさるようにしてゆらゆら蠢いている。


「ここは…どうですか?」


「くっ……ぅぅ……いたっ…」


「ではここは…?」


「あっ………い、痛いって言ってる!」


先程から弱音を吐いている割りには強い口調で罵られているようで、上にいる男は思わず苦笑する。


「では、これで最後にしますねっ。」


男はそう言うなり勢いを付けて青年にのしかかった。ベッドがギチリと軋み、うつ伏せの青年は一際甲高い声を上げた。


「あぁぁぁぁ!」


あまりの衝撃に背中を仰け反らせてから再びベッドに沈む。
最後だという男の言葉を信じて、呼吸を乱しながら強ばらせていた筋肉を弛緩させた。


「日に日に忍耐力が削れてますよ。これくらい我慢出来なくてどうするんです。」


「ぅっ…。だって…」


痛いものは痛いと恨めしく青年が睨む。


「そもそも二日分のカリキュラムを一日でこなそうとするから、僕のマッサージを受けるはめになるんです。」


そう言ってペチリと今まで指圧をしていた太ももを軽く叩いて部屋の明かりをつけた。


男二人では少々狭い六畳の部屋に、骸と綱吉の姿が照らしだされる。


「二日分って言ってもたった二キロ走っただけだろ。」


尚も食い下がる綱吉に骸は嘆息を漏らす。


「いくら上達が早いからといって、自分の力を過信するのは命取りです。…では、僕もお風呂行ってきますね。」


言うなり部屋を出ようとするので、綱吉は反射的に呼び止めた。


「む、骸っ!」


「はい、何です?」


骸はリビングに片足だけ入室した状態で体ごと振り返った。


「あっ………………」


すらりと喉から出てこようとしない言葉にジレンマを感じ、やや強引に押し出した。


「あ、ありがとっ…………マッサージ…………」


羞恥心が先行してしまい、精一杯強がってぶっきらぼうに言ってしまった。
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