復活novel

恋する気持ち
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初恋の相手は漆黒の髪と瞳の持ち主。
楯突く者には一欠けらの容赦も与えず、冷徹に制裁を加える。

でも、彼が張り巡らしている刺々しいオーラは、一度包み込まれるとどんな敵からでも護ってくれる無敵の鎧になるんだ……

包み込まれる心地よさは知っている。

それが、疑似体験であったことも。


でも……

それでも……

恭弥の事………

本当に大好きだったんだ…






「おや?お目覚めですか?」


優しい男の声がした。


(誰だっけ……)


男の顔を見ようと、声のする方を向いたつもりだったが、薄暗くて寝起きの瞳では何も捉えることが出来ない。

今度は起き上がってみようと、腰や腹に力を入れた……つもりだったが、どうやらそれも叶わなかったようだ。

自分の現状は、目蓋を開けたり、瞬きが出来る程度のスキルしか持ち合わせていないらしく、溜め息をついた。


「カーテンを開けますね。今日は曇り空ですので目の負担もさほどないと思いますが……」


カーテンレールの走る音がして、光が部屋に入ってきた。


「うっ……………」


電光石火の如く、目眩ましを食らったように、白の世界に襲われる。


「遮光率九十九パーセントという勧誘文句に釣られて購入してみました。取り付けてからふと思ったのですが、残りの一パーセントは越えられない壁なのでしょうか?」


その男は、どうやらカーテンについて言っているらしい。

自分の体は光に慣れていないらしく、彼の言う曇り空の淡い光でさえ眩しくて、まだ目を開けることが出来ない。
手で顔を覆いたいのに限りなく動作を制限されているため、些細な事がとても煩わしく感じる。

そんな小さな戦いが起こっているなんて知らない彼は、話を続ける。


「でも何となくですが、残りの一パーセントはカーテンを製造したメーカーの逃げ道だと、悲観的に思ってしまいます。だってそうでしょ?この綿密に編み込まれた生地の、ほんの小さな隙間から一筋でも光が零れてしまったら、とたんにクレームものですからね…」


長々とさして興味の湧かない話をされて、少し苛立つ。
その怒気が、顔に出ていたらしく、彼は困ったのか、少し笑ったのか、ふっと息を吐いてこちらに近づいてきた。


「あなたが目を覚ますまでの三日間、ずっとここに居ましたからね。話し相手もいないですし、これくらいの戯れ言は勘弁してほしいです。」


彼が近づいた事で影が出来て、やっと開眼することに成功した。


「……あんたは…………」

どうせ無理だろうと、口を動かしてみたところ、擦れてはいたが声も出ることが分かった。

そのついでに、彼の名前も口にしてやる。


「むく…ろ………」
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