復活novel
□タイミング弐
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───十年後のアジトにて
並盛の地下にあるボンゴレのアジト最下層に獄寺の研究室がある。
研究室には、用途不明の精密機械がずらりと並び、棚にはビーカーやフラスコ等の実験用道具が種類別にきちんと整列してあった。
薬品の独特な匂いが立ちこめるこの部屋に三週間ぶりに入るのは山本だった。
劇薬等も扱っている事から、組織の中でも上層部の限られた者しか入室は許されない。
山本はIDカードを差し込み、扉をスライドさせると奥の部屋で獄寺が背を向けてデスクワークをしているのが見えたので、悪戯に足音を忍ばせて近づいた。
書類にさらさらと筆を走らせて何かを書いている。どうやら報告書のようだ。
(やべ…そう言えば明日会議だった…)
自分はまだ書けていない事を思い出したが、さっきイタリアでの調査から帰ったばかりなので免除してもらえるだろう…と踏んで厄介な宿題を先送りすることにした。
よっぽど執筆に集中しているのか、手を伸ばせば届く距離にまで迫っているのに、彼は手を休める様子はない。
気付いていないと分かると、悪戯心が更に刺激される。
「隼人、ただいまっ!」
意気揚々と声を掛けると、案の定獄寺は「うわっ」と体をびくつかせた。
「てめ、何ガキみたいなことしてんだ!!見ろ!字が歪んじまったじゃねーか!」
不覚にも子供じみたどっきりに驚いてしまった上に、綱吉に提出する報告書にまで被害が拡大し、苛立ちをぶつけてしまう。
しかし、三週間ぶりに恋人に抱き寄せられて唇を奪われては、些細な苛立ち等直ぐにどこかへ行ってしまう。
「会いたかった…」
熱っぽく耳元で囁くと、恋人はビクリと肩をしならせて、久しぶりの抱擁を解こうとする。
「おいおい、ここは『お帰り武。俺も会いたかった。』だろ?」
つれない恋人に冗談を交えながら、もう一度キスをせがむが、軽くあしらわれた。
「なんだよ、拗ねてんのか?三週間の任務なんて珍しくないだろ?」
拒まれる理由が分からなくてつい口を尖らせてしまう。
「…うっせ。明日会議だろうが。…………歯止めがきかなくなったらまずいだろ……」
後半部分は小声になって、恥じらいを見せた。
そんな可愛い態度をとられては、こちらも黙ってはいられない。
「ちゃんとセーブするからさっ。なんか隼人見てたらすっげーエッチしたくなった…」
「んなこと言って、セーブした例しが無いだろうが!」