復活novel

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獄寺は帰宅途中に、コンビニに寄った。

今日は珍しく客を迎える為、何かと物入りだろうと、ATMで金を引き出して、ついでにスナック菓子でも買っておこうとしたのだ。
ここのコンビニは品揃えがよく、好みのマイナー雑誌を取り扱っている為、重宝している。
しかし、菓子やパン等の食品に関しては品揃えが良すぎて、選ぶのに時間が掛かるのが難点である。
本日も例のごとく、菓子のコーナーで立ち往生している。

まず目を引くのは、この寒い季節によく目にする、チョコレート菓子の特設コーナーだ。

冬限定を謳ったパッケージはどれもカラフルで、その水面下ではお菓子業者の努力と闘いが見え隠れしている。

一際目を引くのは、最も見やすく手に取りやすいゴールデンラインと呼ばれる棚に陳列されたポッキーだった。


「っ…………」


昼間の事を思い出してしまって頬が熱くなるのを感じた。


(あ、甘い菓子は今回なしだ!)


獄寺は奥の棚にあるポテトチップスを三袋適当に選び、粗雑に買い物カゴに投げ入れた。

飲み物は最初、コーラとスポーツドリンクを選んでいた。が、少し考えて、部活上がりの恋人を気遣って選んだ事を隠すため、お茶とオレンジジュースも慌てて追加する。


そう言えば歯みがき粉を切らしていたのを思い出して、衛生コーナーへ足を運んだ。
歯みがき粉等の消耗品は普段ドラッグストア等で、割安なものをまとめて買う主義なのだが、今回はそうも言ってられない。


(あいつ…今日泊まんのかな…)


歯みがき粉の上で、フックに掛けられた歯ブラシを見て、ふと思った。
もし泊まりなら新しい歯ブラシを用意しなければならない。


(泊まり……………)


顔から湯気が出そうだ。しかし、部屋に来いと言いだしたのは獄寺だ。

自分では、これ以上変にどぎまぎしたくないので、ヤルことはさっさとヤッてしまおう、だから誘ったんだ…という事にしている。


(そうだ、十代目の前でこれ以上あいつに変な発言をさせない為だっ。)


「ったく、メーカーとかで文句いいやがったら追い出してやる。」


ぶつぶつ言いながらも、メジャーでスタンダードな歯ブラシを選んだ。

歯ブラシをカゴに放り込んだ瞬間、急にカゴが重量を増して、持っていられなくなった。


「なっ…!?」


歯ブラシってそんなに重たかったかと、不思議に思いカゴに目をやると、黒いもふもふした小さな固まりが、カゴからぶら下がっていた。
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