復活novel

甘い戦い
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と、その時校内放送が鳴り響いた。


『沢田綱吉、今すぐ応接室に…』


言わずと知れた、この町の秩序が綱吉を呼んでいる。それも、重低音で…
これは彼の、ご機嫌斜めな状態を表していて、即ち綱吉は、なりふり構わず応接室へダッシュしなければならないという事だ。


「ごめん…っ」


とだけ言い残し、綱吉は脱兎のごとく屋上から姿を消した。


ジャッジを下す人間がいなくなり、寒空の下残された二人はこの勝負をどうするか迷った。

綱吉がいなくなったからと言って、勝負が終わった訳ではない。終わったと決めつけて口を離した方が負けだ。
山本は、この勝負に負ける訳にはいかないと、強気な姿勢で挑む。
なんたって、初めての自室デートが掛かっているのだ。この機会を逃すと、次はいつになるのか分からない。
恥ずかしがり屋な獄寺にとっても悪い話ではない…はず。自分の事を好きでいてくれるのなら、負けを口実にして自室デートを認めてもいいのに…なんて思っているのだが。

一歩も引かない獄寺を見ていると、自信がなくなる。

(そんなに自室デートが嫌なのか…?)


試しにまた三センチ程幅を埋めてみる。
二人の距離は後二、三センチといったところだろうか。
獄寺の体温が伝わってくるギリギリの距離だ。

最後に口付けてから何日経っているのか回想するが、すぐに後悔した。


(もしかして…温泉旅行以来してないんじゃ…)


乾いた喉が水を欲するかのように、自然と獄寺の唇が欲しくなった。

一度欲しいと望んでしまうと、タガが外れたように、とめどなく欲望が増大していく。


(獄寺…折れろって…!何むきになってんだよ…)


山本の我慢に限界が来るか、獄寺が先に折れるか…。
もう後は念じるしかない。

折れろ、折れろ、折れろ…!!




ポキッ…




乾いた音を立てて折れたのは、ポッキーだった。

丁度真ん中で折れてしまい、二人はそのまま硬直した。


「なっ……」


この結果は想定外だ。
負ける事のないこのゲームは、勝てば自室デート、ドローでもキスが出来るという夢のような内容だったはず…!

まさか獄寺はこれを狙っていたのだろうか。

獄寺隼人…恐るべし。


山本は長い間、神経を研ぎ澄ましていた為、その分脱力感も大きかった。

魂が抜けたようにフラフラとその場にしゃがみ込んだ。
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