復活novel

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イタリアで過ごしていた幼少期に母親が病死した。

父親はいない…と言うか、何処の誰かは不明だ。頼れる人間なんかいなくて、天涯孤独になった。

施設に入るよう役所から通達があったが、まっぴら御免だと突っぱねて、誰もいない屋敷で籠城する日々を過ごしていると、父親と交友関係にあったと話す男が現れた。
その男はシャマルと名乗った。

それから紆余曲折を経て、シャマルと共に日本へ渡り、新たな生活が始まった。
当時13歳で雇い手なんかなくて、“自分1人で賄える生活”は高校に入学してから始まる。
いつまでもシャマルに甘えた生活を送るわけにはいかないという思いがあって、好きに使えとあてがわれた部屋で、窮屈な日々を過ごしていたような気がする。

家賃や学費、その他生活費を高校生活と両立しながら稼ぐなんて無理だとシャマルに反対されていたが、あいつの勤め先の高等学校に通うという条件で一人暮らしを承諾してくれた。

とにかく安価な物件を探した結果、築30年の古い二階建のアパートを住居に選んだ。錆びてボロボロになった外階段の鉄柵には、その劣化を隠すようにして蔦が絡まっていた。

大家の沢田さんが『外国の古城を思わせる』とか『夏の日差しを遮断するから住みよい』とか『元々は俺が観葉植物として窓辺に置いてあったアイビーなんだ』とか、蔦ひとつでいろんな事を話してくれた。
物件の安さと、大家の人となりが気に入ったので、他の物件を見ることなくここに決めた。

しかし、高校生活が始まろうとしていたある日の出来事を境に、安易に決めてしまった事を後悔することになる。

道路を隔てた斜め向かいの新築のアパートの前に引っ越し業者のトラックがとまっていた。
新生活がスタートする季節、つまり春なのでさして珍しくもない光景だったが、何となく気になって積み荷を眺めていると、背後から声を掛けられた。


『あ、もしかしてこのアパートの人?』


振り替えると、長身の男がコンビニの袋をさげてたたずんでいた。

勿論違うので、首を横に振って、斜め向かいの古びたアパートを指差して答えた。


『あっちに住んでる。』


『そっか……じゃあご近所さんだな。俺、今日からこのアパートに越してきた山本って言うんだ。……挨拶用のそうめんは全部配っちまったから…』


山本と名乗る男は1人で話を進め、コンビニの袋をごそごそと探りだした。

そして、中から取り出したものは春期限定のスナック菓子…

それをずいと俺に手渡し、『こんなもんで悪いな。よろしくな。』なんて言って、ニカッと笑った。


『……………っ』


眩しかった。しかしそれは、春の柔らかな日差しのように、温かなもので…

不思議な感覚を覚え、俺は指一本動かせずにいた。
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