復活novel
□望む形 1
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※獄寺視点
※シャマルが過保護です
『……じゃあ。』
そう言い残して山本は保健室から出ていった。
掴まれた手の感覚がまだ残っていて、俺は僅かに早まった鼓動を感じながら、そっと溜め息をつく。
強ばっていた筋肉が弛緩し、緊迫状態にあった心が平静を取り戻し始める最中、直ぐ後ろで咳払いする者の存在が…。
「………で、俺は今のやり取りをどう捉えたらいいんだ?」
「ん……あぁ、えっと…」
事情を知るシャマルの目があるから変に緊張して、山本に対しておかしな応対になっていたかもしれない。
あの夜以来初めて触れられた。
大きくて温かい手だ…
その男らしい手に押さえ付けられたり、身体中をまさぐられて快楽の世界に誘われたり…、今日はきつく掴まれたかと思えば優しく手当てしたりして…
「俺、…………」
山本の手、好きだ。
心の中で呟くと、頬が熱くなるのを感じた。
けど、同時にやりきれない想いが込み上げてくる。
『獄寺、好き…好きなんだっ』
直向きに思いの丈をぶつける事なんて、この先ないと思うと……
「まさか障害事件とかじゃねーだろうな?」
半ば、肉体関係を強要されたと捉えているシャマルは、男同士の修羅場になったとでも勘ぐっているようだ。
「そんなんじゃない…。急に声掛けられて、ビビって引っ掛けただけだ。」
「……。なら、さっきあいつが言ってた『考えておいてくれ』ってのは何だ?」
「ああ。俺、授業にずっと出てなかったから、いい加減出ろってこと。」
さらりと問いかけに答える俺に、シャマルは懐疑心を表情に滲ませる。
山本から手渡されたガーゼをきつく握り締めながら、訝しげに着席する俺の前に腰を下ろし、手当てを再開した。
「血も止まってるし、このままでもいいけど…」
何だかんだ俺の面倒は見てくれてはいるが、それは腐れ縁と言うやつがそうさせているのであって、シャマル本人としては男に手当てするなんて極めて不本意に違いない。
俺はその気持ちを汲んで、手当ては必要ないと言ったのに、何故か眉間の皺が増え、手当ては続行される。
「俺なりの見解を言うなら、あの晩あいつは酒に酔って、自分がしでかした凶悪な犯罪行為を綺麗さっぱり忘れてる。」
「きょ、凶悪って……」
「もし頭の片隅にでも記憶があったのなら、罪の意識で出勤すら出来ないはずだ。あいつの神経は図太いが、教え子の気持ちをないがしろにする程図太くはない。」