復活novel
□静寂の中で B面/後編
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※ちょっとHです
地下研究所にある最奥の部屋には、直径1メートル程ある円柱型の装置が3つ並べて置かれていた。
3つ共液体で満たされており、時折ごぼりと気泡が下から上に昇る。
「純水を特殊な成分でゲル化したものだ。粘性はかなり低めに設定してあるが、お前が扱い易いように変更も出来る。」
かろうじて人が見えるくらいに調光されたシーリングライトの照明が、液体を介して骸とリボーンをやんわりと照らす。
「これは……。……そうですね、粘性はこのままで差し支えありませんが、やはり水分ですので蒸発して体積が減る恐れがあります。」
その言葉を待っていたかのように、リボーンは口元を弛ませて事務机に飛び乗り、無造作に置かれたカルテに手を伸ばす。
“最終報告書”と書かれたその書類には、見慣れない化学式がズラリ…
「純水と解け合わず分離する特殊な膜を精製した。油と水以上に仲が悪いとでも思え。この膜で純水をコーティングし、蒸発を防ぐ。」
「……特殊で不明瞭な成分が多く含まれているようですね。」
骸が皮肉をこぼすと、カルテが飛んできた。
結構な速度でもって向かってくるカルテを眉ひとつ動かさずに片手で受け取るが、見る気など起きない。
数式や化学式の解読をした所で何になる。
骸はため息をひとつ落としてから、この長く連なる構造式の先にいる綱吉を想った。彼もまた、ボンゴレが誇る科学技術の秀優作なのだ。
ボンゴレという名の鎖を断ち切って、二人して遠くに逃げてしまいたい。ここへ来るたびに、曖昧だったその思いが山積して決意へと形を変えようとしている。
(………なんて、突飛な考えですね。)
今の自分にそんな力などない。全ての歯車が揃ってから初めて始動する決意なのだから、今はその思いをそっと心奥に宿すだけ。
「ヒューマノイドが気になるか?」
どこまでも鼻が効く男だ。現段階で、逃亡等と見え透いた計画はやはり実行力に欠ける。
骸は「ええ…」と、息を吐くついでに返事をして、どことなくきな臭い最奥の部屋を後にした。
外界から完全に遮断された地下施設では、時間を感じさせない。
モニターの左下で時を刻む、小さなデジタルの表示が唯一時を知る手段なのだが、夕方の6時を回っていたとは驚きだ。
最奥の部屋へ入ったのが午後に差し掛かった当たりなのだから、……
(今日の大半の時間を“健診”に取られてしまいましたね。)
7時には帰宅する約束なので、催促するつもりでこちらからリボーンに問い掛けた。
「…綱吉くんはまだ眠っているようですが、そろそろ教えて頂けませんか?」