復活novel2
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※山本視点
驚いた…
いや、驚いたってもんじゃない。
獄寺が了承してくれるなんて、…
ってか、あの獄寺が俺の家に来ることになるなんて…!
『じゃあ、家来るか…?』
目と鼻の先に自宅があったからって、とんでもない申し出をしてしまったものだ。
無言でこくりと頷く獄寺は貴重と言うか、何と言うか…
いや、そこじゃない!
教師が夜遅くに生徒を自室に連れ込んでいるなんて、本人の了承があったにせよ、やはり非常識なのではないだろうか。
………この際はっきりと言おう。
紛れもなく非常識だ。
俺は疲れのたまった身体に鞭打って、悶々と頭を悩ませながら、取り敢えずリビングのソファーで遠慮がちに座っている獄寺に飲み物を出そうと冷蔵庫を開けた。
連れてきてしまったのなら仕方がない。
作り置きしていた麦茶をグラスに注いで持っていってやる。
「悪いな、うちは年中麦茶なんだ。」
そう言って差し出すと、白い手が伸びてグラスを掴んだ。
ほんの少し、獄寺の指に触れてどきりとする。
シーリングライトの光がグラスの中を屈折して、煌めきを見せた瞬間、脳裏に言葉が過った。
『おい、しっかりしろよ。救急車呼ぶか?』
…………?
獄寺の声だ。
『見捨てて死なれでもしたら寝覚めが悪いだろーが!だから!』
獄寺が…何か言ってる……。
何だ?これ。俺の記憶…?
『獄寺、好き…好きなんだ…』
『アァッ……ァッ…ッ』
身体中に口付けて、名前を呼んで、繋がって……
って、これは記憶じゃなくていつもの妄想だ。
こんな時に何考えてんだか。
これを記憶と言うならば、獄寺との思い出は部屋中何処にでも存在する。
リビングのソファー、寝室のベッド、洗面所、浴槽……
この家はつれない教え子との作られた思い出で溢れかえっている。
「あの………」
グラスを差し出したにも関わらず、いつまでも手放そうとしない俺を困った風に見つめる瞳に気が付いた。
「悪い、ちょっとボーッとしてた。」
にへらと笑い、さっさとグラスから手を引いた。
想いを寄せる人が家に上がったからって浮ついてどうする。
ここは心を静めて、誠意を持って話し合わなければならないのに。
俺は深呼吸して、ローテーブルの前に座椅子を運び、獄寺と向かい合わせになるよう腰掛けた。
「……………………。」
「……………………。」
困った。話題の切り口が掴めない。
目を泳がしていると獄寺の傍らにあったコンビニ袋が目に入った。
形状からして弁当のようだ。
…………あ。
「それ、夜食か?気付かなくてごめんな、良かったらうちで食ってけよ。温めるから。」
獄寺も異存はないようで、すんなりとコンビニ弁当を手渡してくれた。
俺も小腹が空いたような、口寂しい感じがしていたので、レトルトの卵スープを二人分こしらえることにした。
腹が減っては戦は出来ない。長く引き止めて悪いと思いつつ、いつになく素直な獄寺との時間を心の何処かで楽しみ始めていた。